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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

呪解魔法と魔法都市とトルネコ
「まだきちんと礼を言ってなかった
 さっきは助けてくれてありがとう それにしても本当にいいタイミングだったよ」
「私のほうこそ宿の事、本当にありがとう
 たまたま、村の入口まで散歩していたからわかったの
 もし反対方向に行っていたら今ごろこうして会話出来てなかったかもね」

"あはは"とメイは軽く笑う

確かに
助けられていなかったら死んでいた
テリーとの約束を早々に破ってしまう所だ
…鉄兜を重いからって海に放り投げたのは失敗だった
明らかにキングマーマンは頭を狙っていたもんな

「こうしてのんびり話が出来て洞窟行きも決まったんだから、気にしない気にしない!」

メイはきっと心が強いんだろうな 俺みたいにすぐ落ち込んだりしなさそうだ
見習って強くならなきゃ… って、イシス!

「言い忘れてたけど、洞窟へ向かう前にイシスへ立ち寄ってもいいかな?
 魔力を引き出してもらわないといけないんだ」

洞窟の事でイシスの事をすっかり忘れていた

「もちろん、構わないわ
 それにしても魔力を持たないで戦うなんて勇気あるわね」
「そういうものなのか」
「戦う者の常識よ?」

トルネコもテリーも魔力を持っていた
ピピンの真空波も魔力を使っていたんだろう
戦いには必須なんだな

「なるほど… それから古代魔法の事なんだけど」
「古代魔法がどうかした?」
「うん、呪いを解く魔法なんてあるのかなぁと思って」
「呪いかぁ 確かシャナクという呪いを解く古代魔法があったと思う」
「あるんだ!」
「でも、その洞窟にあるかどうかまでは保証できないわ」
「いやいいんだ 可能性が見えただけでもありがたいよ」
「何か理由ありのようね よければ話してもらえない?
 力になれるかもしれないわ」

トルネコの事を話すべきか
……世界中の人がトルネコの呪いの事を知っているんだ、構わないか

俺はこれまでのいきさつをメイに説明した
もちろん、異世界からこの世界へ来た事は伏せて─

「そう、だったの…
 勇者トルネコの事は残念だったわ、私も悲しかった
 封印された中にシャナクがあると良いんだけど…」
「うん そう願うよ」

少しの沈黙が続く
ふと、メイが何かを思い出したように口を開いた

「…魔王に滅ぼされた町の一つにカルベローナという魔法都市があって、とても大きな力を持つ魔法使い達が住んでいたの
 その魔法使い達は古代魔法を扱っていたという話もあるわ
 外の町や国との交流はほとんど無かったから、ただの噂かもしれないんだけど…
 でも古くから伝わる高度な知識をもつ人々なのは確かよ」
「しかし、滅ぼされたんだろう?」
「滅ぼされた町や国で生き残った人々は、目立たない所に小さな集落を作って暮らしているらしくて─
 カルベローナの人達もそういう集落に隠れ住んでいるかもしれない
 私も協力するから、その人達も探しましょう?」

古くから伝わる高度な知識
もしシャナクが無かったとしてもその知識でなんとかなるかもしれない…

だけど、これは俺がする事だから─

「気持ちはとても嬉しいけど… メイにそこまでしてもらうわけにはいかないよ」
「ふふ タカハシは遠慮してばかりね
 もし呪いを解くことが出来れば勇者トルネコは復活できるんでしょう?
 そうすれば私の目標も達成できるんだから、これは私の為でもあるの」

呪いが解けたら… トルネコは再び勇者として魔王に立ち向かうのか
トルネコの記憶が戻ったら… 勇者としての使命を果たせなかった事を悔やむ日々も戻ってしまうのか

呪いを解いた後はトルネコの好きに生きてほしいと思う
だけど、トルネコは悔やむ日々を選ぶと思う
それに、メイの言うように魔王と戦う事はしてほしくない

…わからない
もしかすると俺の行動は"最善"ではないかもしれない
だけど、俺はこのまま進んで呪いを解く方法を探す

これ以上トルネコを、苦しませないでくれルビス

「ねぇタカハシ、聞いてる?」
「あ、うん …ありがとう、メイ」
「勇者様を助ける旅、決まりね!」

今はまだわからないけど… 
今はそうする事が"最善"なんだと、思う
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