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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

一人になって
俺はテリーと別れた後も村の入口で立ったままカンダタを待っていた
村の外、遠くに一匹、ガニラスの姿が見える

テリーは大丈夫だろうか
あれだけ苦戦したあのガニラス達を今度は一人で相手していくんだ
ああ、でもあれは俺が不注意に海に入って派手な音を立てたせいだったか…
これからは俺も一人で戦っていくんだ

「待たせたな!」

太い声に振り向くとオリハルコンの剣を持ったカンダタが立っている

大きな身体にはオリハルコンの剣、いや銅の剣だって似合わない
丸太か、巨大な斧が似合いそうだ
もちろんそんな亊、カンダタ本人には言えない

「あ、おはようございます」
「あいつはもう村を出たか 剣が直って相当喜んでいたからな
 今ごろは嬉々と戦っているだろうよ」
「はは そうですね
 テリーは戦いが好きですから」
「今度はオリハルコンを鍛えるぞ
 さぁ剣を持ってお前の戦いを見せてくれ」

そう言ってオリハルコンの剣を渡すカンダタ
俺は剣をとり、気を入れ換え、村を出る

手始めに向こうにいるガニラスを相手にしよう

「ではお願いします」

離れて見ているカンダタに告げ、ガニラスと対峙する

ギチギチと警戒するガニラス
俺はゆっくり近付き間合いを確認し、斬りかかる
ガニラスは巨大なはさみを下方からすくい上げ俺を狙う
そのはさみをスッと避け刀身を垂直にし口へ差し込む
グサリと刺さったオリハルコンの剣
そのまま力を込め剣先を押し込む
グゲェと醜い声を発し動かなくなるガニラス

「ほう、やるじゃねぇか」
「はは どうも」

俺の動きに、歩み寄りながら感心するカンダタ

ガニラスとは散々戦ったんだ
動きも弱点も心得てる─

「よし、もう一匹との戦いを見せてくれ
 それを見れば十分だ」
「わかりました」

周りを見渡し魔物を探す
海の方には二匹の魔物

あれは…

「キングマーマンだな 二匹だが大丈夫か?」
「やってみます」

ガニラスを難なく仕留め気をよくしていた俺はそう返す

二匹のキングマーマンもこちらに気付いたようだ
ザバザバと波を立て近付いてくる
その音でガニラスの大群が現れるのを恐れたが、そんな様子は感じられず少し安心した

「だけど海の中で戦うのは自信がない…」
「やつらは砂地まであがってくる
 村にも何回か入って来たこともあるしな
 俺はここにいるから行ってこい だが相手は二匹だ、無理はするなよ」

見ると確かに、尾びれを器用に使い陸へ揚がってきた
砂の上で止まった二匹のキングマーマンの前へ、俺も近付き身構える

「我々を見ても怖じ気づかないとは生意気な人間だな!」

こいつらは喋れるのか!
少し驚いたが動揺してはまずい

俺は間合いを取りながらタイミングを伺う

「度胸は褒めてやろう、ただしこの爪でズタズタにした後でな!」

鋭い爪を広げ襲ってくるキングマーマン

俺の前後に展開しはさみ討ちするつもりだ、くそ!
このまま動かず正面のヤツを…!

「ヒャヒャヒャ!」

前方から向かってくるキングマーマンの爪が俺の顔面めがけ降りおろされる
俺はかがんで爪を避けオリハルコンの剣を魔物の下半身へ叩き込む

「ぐぅが!」

大きくのけぞりそのまま倒れるキングマーマン
俺は身体を反転させ急いで後ろの魔物を牽制しようと剣を持つ腕を伸ばす─

ザシッッ

無防備に伸ばした俺の利き腕は、すでに振り降ろされたキングマーマンの爪でえぐられた

「ぐあああ!!」

やばい まずい、このままじゃ……!
痛さと、体中に走るしびれ
腕にはざっくりと爪痕 そこから流れ出る大量の血
魔法の鎧は肩までしか覆っていないから直撃だった

「なんだキサマ 前ばかり向いて愚かな戦い方、相当死にたいらしい
 では、殺してやろう」

キングマーマンが冷たい声でゆっくり言い放つ
俺は麻痺状態になってしまい、しゃがみ込んだまま動けない
遠くでカンダタの怒鳴り声が聞こえる

"ここで 終わってしまうのか……"

キングマーマンの爪が俺の頭へ落とされる─!

「メラミ!」

声と共にゴォンと音を立て炎に包まれる魔物

この声は…
どうやらあの賢者にまた命を救われたようだ

「ハァハァ…! 大丈夫か?
 すまねぇ、俺は腕に自信があるんだが素早くないんだ」

カンダタが息を切らして駆け寄る

「ベホマ! キアリク!」

メイも走り寄り魔法で回復してくれた

「どうしてこんな無茶を」
「助かった… ありがとう」

半分呆れ顔で言うメイに情けない声で返事をした
いつから見られていたのか…

「ふぅ… お前、剣捌きは上手いんだが経験が足りねぇみたいだな
 まぁ無事でなによりだし動きも十分見れた、村へ戻ろう」

俺は…
強いと言われ調子に乗っていたのかもしれない
今まで戦ってこられたのはなんの事はない、トルネコとテリーの誘導のおかげだ

麻痺は治り傷口はすっかり塞がったが攻撃を受けた腕のしびれは少し残っている
だが爪痕は消えない 不名誉の傷ってやつだ…

明らかな経験不足
ガックリと項垂れ村へ戻った
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