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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

賢者メイ
フィッシュベル入口で倒れるテリー
慌てて目の前の宿屋に部屋を借り休ませる

「ふぅ… すまないな」
「大丈夫なのか?」
「さっき逃げる為に使ったあの技だ "地響き"といってな、衝撃が自分にも返ってくるが、強力だ
 上手く出来たのに訓練してなかったからその衝撃を上手く流せなかったよ」
「そう、だったのか… そんな技を使わせて済まない」
「おいおい 俺も助かるつもりでいちかばちか使ったんだ 謝る必要は無い
 むしろ助けてくれた女性にきちんとした礼を早く言わなきゃいけないよな」

そうだ
部屋に着くまでテリーを支えてくれていたのは覚えているが何時の間にか居なくなっていた
だけどテリーはまだ動けない
もし旅人だったら町から居なくなってしまうかも─

「すぐに礼をしてくる 休んでいてくれ」

"頼むよ"とテリー
部屋を出てすぐのロビーへ急ぐ

「いた!」

受け付けで宿屋の主人に何か交渉している女性を見付けた

「お願い! 今これだけしか持ってないの…」
「うーん そういわれてもなぁ 最近旅人も減ってこっちも大変なんだよ」
「なんとかお願いできないかしら…?」
「しかし1Gではなぁ……」

値切り交渉か
しかし1Gってここまでよく旅してきたな…

膠着状態の間に無理矢理入り話しかける

「さっきはどうもありがとう 相方も疲れただけだから大丈夫、何かお礼をさせてください」
「あ 一緒の人は大丈夫になったのね? よかった…
 困ってる人を助けるのは当然なんだから気にしないで」
「そういうわけにはいかないよ… そうだ!
 宿代で困っている様子だから宿代で礼をします」
「え、ああ 見てたのね… 確かに泊まれなくて困ってるけど……」
「命を救ってもらったんだからこれでも足りないくらいです 遠慮しないで下さい」
「でも…」

女性の顔には喜びとも困惑ともとれない表情
しばらく考え"じゃあ…"と頷いた

「何泊しますか?」
「… あなた達は何日?」
「俺達? まだ決めていないけど」
「そう… あなた達と同じでもいい?」

俺達と同じ?
意味があるのかわからないけど命の恩人だ
それくらい安い

「本当にありがとう! 私は少し用事があるからまた後でね!」
「あ、名前はなんと─」
「メイ、賢者よ 後でゆっくりお食事でもしましょう!」

荷物を抱え足早に部屋へ向かう女性

「俺の名前言うの忘れた…」

まぁ俺達と同じ期間泊まるならまた合うだろうしいいか
とりあえず部屋へ戻ろう


部屋へ戻るとベッドで上半身を起こすテリー 少し回復したようだ

「どうだ? 礼は言えたか?」
「うん 気にしないでって言っていたけど、宿代が無いって困ってたから代わりに出すことにした
 後で食事しようって誘われたよ」
「ほう で、名前は?」
「メイ、賢者だと言ってた」
「賢者だったのか! 若い身空で対したものだ」

驚く程の事なのか?

「賢者は我々なんかより遥かに高い魔力を持っていて 強力な魔法を属性関係なしに扱える
 世界に数人しかいない、魔法の達人だよ」
「そんなにすごい人だったのか! 確かにあの魔物の群を一瞬で焼き払ったもんなぁ…」
「高い魔力を持つ姉も賢者を目指したけどなれなかった
 努力だけでは無い、きっと天性のモノが必要なんだろう」

テリーの姉といえばグランバニアで魔法を得意とする上級兵士
その上級兵士をも上回る魔力

でも、話した感じそんな感じには思えなかった
どこにでもいるような若い女性だ
まぁ俺も人の亊言えないけど…

「俺もまだまだ修行不足だな
 魔物の特性を考えず魔力と体力を使い果たしてしまった…
 あのメイという女性が助けてくれなかったらやばかった」

嶮しい表情で言うテリー

いや
ガニラスに囲まれた時のテリーは凄まじい動きだった
あんなに追い詰められてしまったのは俺をカバーしながら戦かったから─

「テリーは俺を助けながらの戦闘だったんだ 俺が足を引っ張って…」
「…そんな事は微塵も思っていない、気にするな
 あれだけ立て続けに仲間を呼ばれたし俺一人だったら今ごろ棺桶だよ
 あまり物事を後向きに考えてるとメイって娘に嫌われるぞ、暗いって」
「え いや関係無い…」
「ははは! じょうだんだ、冗談
 ところで俺はまだしばらく動けそうに無い、鍛冶屋は明日でもいいか?」
「うん、今日はもうゆっくり休もう 陽も傾いてきたからどのみち何も出来ないさ」

空いたベッドへ身体を沈める

こうしてゆっくり横になるなんて久しぶりだ
長い時間硬い土や木にもたれて眠るしか出来なかった
このままずっと眠っていたい……

突然、町へ着いた安心感に襲われ瞼が重くなる

「おやすみ…」

寝言のような細い声でつぶやき、俺は眠った
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