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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

フィッシュベル
「ではまたな グランバニアで待っておるよ」
「はい、必ず戻ります」
「タカハシ殿… お前さんとはまたどこかで会えると願っているよ 達者でな」
「メルビンさんもお元気で… お世話になりました」

本当に また会えると良いな

「じゃあねタカハシ! ボクの事も忘れないで!」
「もちろんだよホイミン、またな!」


馬車が離れていく
少しトルネコを感じさせる人だった

「よし! 食料も水も補給できたし行こう!」

重くなった荷を背負い歩き始める
うまいモノを食べすっかりリフレッシュした身体は軽かった

「ところで、海の魔物はやっぱり魚だったりするのか?」
「魚みたいなのもいるがな、カニや貝の化け物もいるぞ」

貝はともかくカニのでかいのは恐いな
巨大なハサミではさまれたらと思うと…


『ザサッ ザサッ』

「出やがった!」

想像の魔物はすぐに姿を見せた
少し離れた前方に三匹の魔物が壁を作る

「よし… 俺はあの亀を相手にするからお前は残りを頼む」
「わかった」

二手に分かれ魔物を挑発する
最初に動いたのはヘルパイレーツ 俺が相手をする魔物だ

が─ 俺達の目論見とは逆にその長い槍がテリーを突く
面くらい慌てて避けるテリー オクトリーチも続けてテリーへ襲いかかる
砂の上だというのに異常に素早い動きを見せる魔物
残るガメゴンは俺をじっと見ている

じりじりと間を詰めようとするがうまくいかない
逆に間を開けられてしまう

「こいつ… なかなかやるな」

今まで倒した魔物達とは違い頭を使っているようだ
これでは得意な間合いに入り込めない

見えないが離れた所でライデインが地に落ちる音が聞こえた

俺は痺れを切らし突きの構えで足元を蹴る
初見の魔物相手に突きは危険だ─

「ゴアアァ!」

もう一歩で剣尖が届くという刹那
ガメゴンの吹く冷気をまともに喰らう

「クッ…! この!」

弱い冷気だ
細かい傷を負いながらもガメゴンの頭と胴体の間を斬首した


「倒したか」
「大した威力じゃなかったから助かったよ」

薬草を数回噛み飲み込む 苦みが痛みと傷を消していく
ヘルパイレーツとオクトリーチはライデインによって炭になっていた

「ガメゴンは物理攻撃があまり効果ないんだ 弱点である首を良く見極めたな」
「甲羅は硬いだろうし… 正直言うと冷気が痛くてもう一歩踏み込めなかっただけだよ
 本当は尻尾を狙ってた」
「尻尾? なんでまた」
「いやぁ、尻尾持ってる奴はソレがやっぱり弱点なのかと……」
「なるほど まぁ倒せたから善しとしよう まだまだ経験が必要だな」


「ギチギチッギチッッ!」

二人を四方八方から囲み気味の悪い声を出す数十匹の魔物
何体倒しただろう テリーの魔力が無くなってから剣で戦っていた
かれこれ1時間 そうしている

「俺が海に入らなければ─」
「よせ! 今は逃げる事を考えるぞ!」

受ける刃が折れてしまいそうな程強い力でハサミを振り回す魔物

「群じゃなけりゃこんな相手……!」

心が緩み 海に入ってしまったのがよくなかった
潮をかき混ぜる音は音速で海中へ伝わりガニラスとしびれくらげを刺激した
倒しても倒してもキリがない こいつらは仲間を呼ぶのだ
すぐそこにある町へ 入れない

「このぉぉ! もう町は目の前だっていうのに!」
「このままじゃまずい… 成功した事のない技だが… やってみるぞ─」

巨大なハサミが俺の背中を殴る
のけぞり 痛みに耐え 身体を翻し巨大な口へ剣を突き刺しそのまま水平に斬り裂いた

ガニラスの身体に外側から傷を付けることは容易では無い 内部から傷付けるしかない
そのガニラスにはライデインがよく効く
あまりにあっさり倒せるためテリーも調子にのり魔力全てを最初のうちに使い果たしてしまった

「そ、そいつはすごい技なのか?!」
「成功すればな! 逃げ道を作るにはこれしかない… いくぞ!!」

テリーが腰を落とすと同時にその足元─
大地に地震のような揺れがズゥンと伝わり その衝撃波は地上の魔物と砂を吹き飛ばし視界を遮る

「うお……!」
「い、今だ走れ!!」

声を合図に舞っている砂の中へ走り込む
前がほとんど見えない が、今しかチャンスは無い

「走れはしれハシレ!!」

巻き上がった砂塵が落ち着き周りが見えてくる

「─町だ!! あ!?」

振り返ると魔物に囲まれうずくまるテリー
先を走ってたんじゃ?!

「タカハシ! か、構わず行け!」
「なにを言う!」

町は目の前だったが急いで引き返す
テリーを囲む魔物 ガニラスの群の中にしびれくらげがいる

「麻痺か…! 今─」
「メラミ!!」

後ろから声 同時に巨大な炎の塊が熱風と共にガニラス数匹を消し去る
突然の炎に魔物達は混乱し 俺も驚く

「今のうちに!」

声に押され身体が勝手に動き右往左往する魔物の間からテリーを引っ張り出す

「メラミ!! ベギラゴン!!」

グゴォォゴゴゴ… 轟音
あたり一面炎に包まれ魔物を燃やし尽くしていく

「大丈夫?」
「ありがとう 助かりました…」
「気にしないで キアリク! ベホイミ!」

二人に治癒魔法を施す若い女

「う… す、すまない…」

礼を言うテリー まだ調子は戻らない
魔物の群の在った場所にはたくさんの光が現れその亡骸を持ちさっていた
あれだけの魔物を一気に燃やしてしまうとは─

「どういたしまして とにかくフィッシュベルへ入りましょう」

テリーに肩を貸し言われるまま町の門をくぐる

「やっと… ここがフィッシュベル… テリーやったぞ!」

『ドサッ』

「テリー?!」
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