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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

テリーの考え
「若者と語るのは久方ぶりで飲みすぎてしまったわい!」
「ホイミンも飲むんですか?」
「一度飲ませたんじゃがえらく横暴になっての、それ以来飲ませてないんじゃ わっはっは!」

しんみりした話は終わり談笑に切り替わっていた
トルネコもそうだったが聞いていてとても楽しい
テリーはというと黙ったまま 顔は話に合わせ笑うのだが何か考えているようだ


"そろそろ寝るか"と片付けを始めると突然、テリーが口を開く

「メルビン殿 俺に剣術を教えてくれませんか」

突然の話にメルビンが眼をパチクリさせる

「すぐにではなくこの雷鳴の剣を修理してからになるのですが…
 先ほどの手並、一瞬だけでしたがあなたは俺などより遥かに強いと感じた
 ……お願い できないだろうか」

油の無くなりそうな激しいランプの炎が テリーの真剣な表情を際立たせる

「ふぅむ… しかしワシは もう昔ほど動けないんじゃよ
 教える事が果たして出来るかどうか」
「言葉だけでもいいのです あなたからいろんな事を学びたい!」
「…なぜ 剣術を学ぶ?」
「それは 目の前で倒れる人を無くしたいから─ です」

ランプに油を継ぎ足すメルビン
一瞬消えかけた炎が安定した明るさを取り戻し その厳しい表情を照らす

「今すぐ決めてもらおうなんて考えていません
 次会うことが出来たときに…」

深々と頭を下げるテリー
三人に静寂が降りる


静かに燃える小さな炎
手を伸ばせば届きそうな星空 見ていると吸い込まれてしまいそうだ

メルビンが口を開く

「テリー殿 あんたはワシを─
 ワシに黙って何処へも行かないと約束できるか?」
「お約束、します…!」
「……ワシはグランバニアへ向かうから町の周辺を探すと良い
 ただし、本当にどこまで教えられるか保証はないぞ?」
「ありがとう ございます!」

メルビンの言葉にしっかりした返事をするテリー

テリーは メルビンの元で学ぶ事を決めた
トルネコの師 きっと強くなれるだろう

「今日は遅い…
 ワシも長旅が待っておるからもう寝よう 今日は楽しかったよ」

メルビンがそう言いながらホイミンを抱え馬車へと入っていった


「テリー、今後が決まったな おめでとう」
「ははっ めでたい事か?」
「うーん… まぁでも今まで無かった目標が出来たわけだから」
「そうか そうだな」
「俺は どうしようかな…」

器に残った酒をちびりとなめる
僅かな量なのに身体が熱くなった

「お前は呪いを解く旅だろう
 あ、強くなってルビス様に会うってのもあったか…」
「うん まぁ… 正直一人でやっていけるか不安だらけだが頑張るよ
 それから、テリーの判断は正しかったと思うよ」
「トルネコ殿を育てた腕前だ この人につけば強くなれると思った
 ……次会えた時はでも、商人になっているかもしれん」
「似合わないな… そうだったら笑ってやる」
「何を言うか! 強い商人だ!」


"そろそろ寝よう" まだ煙くさい小屋へ入る
ちょっとの酒で酔った俺の身体がもう動けないと勝手に寝転がる

「……なぁタカハシ」
「ん?」
「何か 俺に隠してないか?
 お前から不思議な雰囲気を感じる時があるんだ
 ルビス様の声を聞く事が出来るし強くなる早さも尋常じゃない
 特別な─ 人間だったりするのか?
 時々ひどく悩んでいることもあるし…」
「……」

俺はテリーの真実を言うべきか迷った
ここで言ってしまうとテリーも巻き込んでしまう
いや それより信じてもらえないほうが辛い

「……何も無いよ 俺は普通の旅人だしいろんな偶然が重なってるんだと思う
 強いって言ったって今までが弱かったんだからさ、強く見えるだけだよ
 俺は特別な人間なんかじゃないよ!」
「そうか それならいいんだが…… 何かあったら何でも言ってくれよ?」
「ああ、なんでもないんだ …ありがとうな」
「じゃあもう一つ
 お前は後向きに考えすぎるから根暗に見える事がある それじゃ女に嫌われるしモテないぞ?」
「うっ 余計なお世話だ!」

テリーは気付いている
俺が普通の住人では無いことに─

俺の得意技ネガティブ思考
これが魔物を倒せる技だったら楽なのに

『おれ:必殺ネガティブ思考!』
『魔物:ぎゃあああぁぁ あ なんか戦ってもこの人間にはどうしても勝てない気がする…』
『おれ:貴様があがいても俺には勝てぬ!』
『魔物:どう考えても無理だー』

「フフ…」
「なんだ?! 突然笑うなよ、気持ち悪いぞ…」
「す、すまん…」

……無理だよなぁ
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