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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

勇者を探す旅
ホイミンはメルビンの側で寝ている
不思議な関係だ

会話の途中で燻製が出来上がりメルビンによって馬車の中へ干された
俺も出しっぱなしの薬草を思いだしリュックに詰め、戻る

「メルビン殿は強いですね 俺の剣を簡単に弾いた」
「いや、もう僅かな時間しか戦えんよ 一瞬ならば今でも負ける気はせんがな わっはっは!」

テリーはほろ酔い程度で止めていたがメルビンは飲み続けかなり酔っていた
俺はホイミンとの出会いを知りたくなり、遠回しに旅の事を聞く

「うーん 何年じゃろうなぁ… 数十年としか覚えておらん
 勇者トルネコを知っているか?」

トルネコ─ もちろん知っている
少し動揺してしまった

「え、ええ… 呪いをかけられた…」
「うむ あのトルネコに剣術と商売を教えたのはこのワシじゃ」
「え!? じゃ、じゃあ、勇者を育てた─」
「いや 勇者とは知らんかった 確かにトルネコは強かったがまさか、なぁ」

トルネコの師匠
だから俺達の剣をあんなに軽々と…

「トルネコは五年ワシと旅をした ある日ルビスの声を聞いたとかでどこかへ行ってのぉ
 あの時は意味が解からなかったが 勇者になったんじゃなぁ」

意外な話にテリーも聞き入っている

「元々ワシはグランエスタードの兵士じゃった
 ああ グランエスタードとはこの地方を治めていた国、ずいぶん昔に滅ぼされたがの
 その王の密命で勇者を探す旅をしていたんじゃ
 国が滅ぼされてもワシは商人となって勇者を探した
 その時トルネコと出会ったんじゃな」

酔いも手伝ってか自分の事を話し始めるメルビン
"ふぅ"と酒を飲み干し 続けた

「勇者になったと言ってくれればワシも一緒に戦ったんじゃが…
 たぶん、迷惑をかけまいとして… 今さら遅いがな
 しかし… 今にして思えば王の言う"勇者の特徴"は所詮伝説に過ぎんかった
 トルネコが勇者だったと知って─ 重ねた年月はなんだったのか…」

勇者の特徴?

「それはな"何人も寄せ付けぬ神々しいまでに厳かな気を生まれながらにして持つ者"だったんじゃ
 ところがトルネコは普通の青年 ワシは無駄な事をつい先頃までしておった事になる」

メルビンの数十年を思うと何も言えない
勇者トルネコの事を知ったとき どんな気持ちになっただろう……

「しかし実の所はな 旅の途中で人懐こく寄ってきたホイミンと旅をするうちに…
 勇者探しが一番ではなくなっていったんじゃよ
 たった一人で生きてきたこのワシにずっとついきてくれるホイミン
 嬉しかった 今まで感じたことのない喜びがあった
 ワシはその喜びの為に この数年生きてきたようなものじゃ」

メルビンにとって守る者はホイミン
皆"守るもの"を持っている…
俺はまだ"守るもの"を持っていない
元の世界へ戻るという気持ちは間違いなく守らなくてはならないのだが─
その事はあまり考えなくなっている
戻らなくてもいいと思ってるわけではないけど…

「あんたはトルネコの呪いを解く方法を探しているんじゃろう 雰囲気でわかった
 …頑張るんじゃよ」
「ええ きっと」

元の世界では暮らしを守るために生きていた
その暮らしを取り戻しに俺は戻ろうとしている…? それさえ今はわからない
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