[] [] [INDEX] ▼DOWN

タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

創造の神ルビス
「夜の山道は危険です、早めに寝床を確保しましょう」

陽が傾きは始めた所でトルネコが言った
俺はうなずき野営の準備をする

「始めの戦いの後、更に動きが良くなっていました
 迷いは動きを鈍らせる、忘れないでください」
「…トルネコさんはどうしてそんなに強いんですか?」

トルネコの戦いぶりは神技としか思えなかった
ほとんど身体を動かす事無く魔物を倒すのだ

「私は─ 物心着いたときから旅をしていましたから
 最初はタカハシ殿と同じ、魔物相手に戦うことに躊躇っていました」
「トルネコさんでもそうなんですか…」
「ホッホッ 好きで殺生をする人なんていませんよ
 ですがやはり、魔物は私たちを殺します」
「その躊躇いはどうやって消せたんですか? 何かきっかけが?」

山に入って最初の戦いから他にもキメラやオーク、オークキングなどを相手に戦い勝利したが
まだ完全にはふっ切れてはいなかった

「戦い自体はもう数十年の経験がありますが… そうですね 
 守るべき人が出来ると変わる、とだけ答えておきましょう ホッホッ」
「守るべき人…? あ、もしかして?」
「ま、まぁ、いいじゃないですか」
「トルネコさーん、そうなんだ」

トルネコは顔を真っ赤にしメラで火を起こす

「恋人を置いて旅をするっていうのも辛いですね、結婚とかしないんですか?」
「いえ、まぁ… いいじゃないですか! さ、さぁ食事にしますよ ホッホッ」

珍しくトルネコが動揺している
もしかしてうまくいってないのか?
これ以上深く聞けない雰囲気になったな…



『パチ… パチ…』

焚き火の炎が薪を乾燥させ音を立てる
トルネコが先に寝て俺は見張に立っていた


守る人の為に強くなった、か
俺には元の世界へ戻るって言う目的がある

……戻る、どこに?


静かに燃える炎を見つめ少し考える


日本だ、日本の俺の部屋だ
どうも最近向こうの世界を忘れそうになる
この世界に来てずっと忙しく動いてきたからかな





『タカハシ…』

「ん?!」

『タカハシ、聞こえますか?』

「だ、誰だ?」

突然女性の声が頭の中に響く

…周りの様子がおかしい
身体も白い靄がかかった空間に浮かんでいる

「なんだ…? トルネコさんは?!」

『ようやく見付けました、私はルビス… この世界を創り守る神…』

「ルビス? 神だって? 知らない…!」

『…あなたをこの世界へ連れてきたのは私です』

「え…?!」

『あなたがもっと強くなった時、詳しくお話します
 今はまだ、その時ではありません』

「まっ、待ってくれ! なんで俺を?」

『今は話せません、これ以上は魔王に感知されてしまう
 私と夢で話をした事は他言無用です、強くなって下さいタカハシ…』

「まってくれ、頼む!!」





「タカハシ殿!?」
「…! ト、トルネコさん…」
「どうしたんです? ひどくうなされていましたが…」

う… 寝てしまった…か…

「い、いえなんでもないです 魔物にかじられる夢をみたもので…」
「それなら良いのですが、驚きましたよ ホッホッ」
「あ、それより見張りの時に寝てすみません…」
「気にしないで下さい、元々一人旅の時でも夜はあまり眠りませんでしたから」

俺をこの世界へ連れてきたと言っていたが…
なんの目的で、なんで俺を?

そういえばトルネコが我々の神ルビス様って言ってたっけ…
本当に存在、したのか…

「タカハシ殿、今夜は私が見張りますから眠っていても良いですぞ」
「いえ、そうはいかないですよ」
「私はもう十分に寝ましたから、構いませんよ」
「じゃあ、俺も起きてますよ 変な夢のせいで眠れそうに無いんです」





三日目の夜、俺は先に寝かせてもらっていた


『キィン!』

「…を…せ!」

『ガキィン!』

「…ルビス……!」
「…知らぬ!」


…なんだ?!
俺は起き上がり警戒しながら音と声のする方へ歩いていく

「隠すと為にならんぞ!」

『ガキィ! キィィン!』

トルネコと… 鎧の魔物が戦っている!

「魔王様がここから気配を感じとったと言われたのだ!
 お前がルビスの使いか?!」
「私はただの商人だ、ルビスの使いなど知らぬ!」

ルビス? ルビスだって?!
俺は夢で話をした… だから魔物がきたのか?!

「む、おまえの後ろの若僧は… なんだ弱っちいな、やはりお前が使いだな!」
「知らぬ! バギマ!」

『ゴオオオゥ!』

風の刃が鎧の魔物を襲う
が、鎧は全くダメージを受けていない

「クックックッ! そんな呪文効かん! ルーラ!」

鎧の身体が飛ぶように消える

「く、逃げられてしまったわい…」
「トルネコさん! 大丈夫ですか?!」
「ああ、私は大丈夫です」
「今の魔物… ルビスの使いとか言ってましたが…」
「…心配はいりませんよ、大丈夫」

ルビスの使い…
俺の命を狙ってきたのだろうか?
だけど、ルビスなんてついさっき夢の中で声を聞いたばかりだ

俺は不安気な表情で焚き火を見つめる
トルネコもかなり難い表情をしたまま、何も話すことは無かった
[] [] [INDEX] ▲TOP

©2006-AQUA SYSTEM-