[] [] [INDEX] ▼DOWN

タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

違う世界
グランバニアの国?
そんな名前の国あったかな

あ、俺も名乗らないと失礼か

「俺は…タカハシっていいます」
「一晩ですがよろしく頼みますぞ
 して、タカハシ殿はどうしてこのような所に?
 失礼ながら旅をしている格好ではないようですが…」

どうしてこんな所に居るのかなんて逆に俺が聞きたい
ここは起こった事を話しておこう

「うーん 実は…」

俺はこの小屋まで来た"いきさつ"を話した

「ふむ…
 目が覚めたら知らない部屋に…」
「そうです
 だから俺はここがどこかわからない、一体どこなんですか?」
「ここはメルキド地方、あなたが目を覚ました町はたぶんメルキドでしょうな」
「メ、メルキド? 日本じゃないんですか?」
「はてニッポン? そんな名前の場所はこの世界にはありませんぞ?」

な 何を言ってるのだこの人は
日本がないなんてそんなこと…
ははぁ からかってるのか?

「トルネコさん、冗談はやめてくださいよ!
 ここは日本のどこか山奥なんでしょ!」
「いえ…
 本当にこの世界にニッポンという国や町はないのです
 そしてここはグランバニア領メルキド地方にある休憩小屋、間違いありません」

トルネコの目は真剣だ
嘘を付いてるとも冗談を言っているとも感じられない

「だ だとしたら、ここは一体何なんです?
 俺はグランバニアやメルキドなんて知らない…」
「うむ… なんだかよくわかりませんな…」

しばらく二人して考え込む

『グゥゥ』

う、こんな時でも腹は減るのか…

「その様子では何も食べていないのでしょう
 食糧は余計に持ち歩いていますから食べませんか?」
「すみません、何にも食べてないんです…」
「ホッホッ かまいませんぞ
 今準備しますから少しお待ちくだされ」

トルネコは野菜やら肉やらを使い調理を始める

ここが日本でもなく海外でもないとしたら… 一体なんだ?
トルネコも名前は日本人では無いし…

「出来ましたぞ」

受け取った皿には炒めた肉と野菜を薄いパンで春巻のように包んだ食べ物が乗っていた
"いただきます"と、まずは一口かじってみる

「おいしい…」
「ホッホッ 自慢の一品です」

そのまま夢中で喰らいつき、あっという間に平らげる
ボリュームもあり腹も落ち着いた

「さぁ、お茶もどうぞ」
「ありがとうございます
 そういえばここに来る途中、青いプヨプヨがいたんですが… あれはなんですか?」
「それはスライムという魔物です
 しかしタカハシ殿、スライムを知らないなんて変わってますな」
「魔物?」
「ええ、魔物です
 本当に知らないのですか?」
「それはどういった……」

トルネコは驚いた顔をしている

「え、ええと…
 魔物とは人間を襲い殺す生き物で、魔王の手下ですな」
「え、魔王… ですか…」
「まさか… 魔王を知らない、と?」
「…」

魔王とか魔物とか正気とは思えないが…
でも俺は、スライムという魔物を確かにこの目で確認し襲われた
いや、おかしいぞ なんだこの急展開…!

「ふむ… タカハシ殿はもしかすると、違う世界から来たのかもしれませんな」
「違う世界…ですか?」
「この世界で魔王を知らない人間が居るのは有り得ない事なのです
 魔物だって町から出なかったとしても必ず目にします
 …記憶を失っているのでは無いとすればですが」

違う世界…
言われるとそうなのかもしれない
そう考えればスライムの存在や知らない国がある事の説明にはなる

「記憶ははっきりしてます…
 だけど、違う世界なんて突然過ぎるし理由もない すぐには受け入れられない…」

なんでこんな事に…
本当に違う世界だとしても、俺一人でどうすればいいんだ…


その後しばらく無言で時を流した


「悪い方へは考えずに… きっと戻れます
 今日はもう遅いし疲れたでしょうから寝ましょう
 明日からは私と行動すると良い 魔物を知らないなら一人で行動するのは危険過ぎる」
「…いいのですか?」
「もちろんです
 私は旅商人ですから町を転々としながら元の世界へ戻る方法を一緒に探しましょう」
「ありがとうございます… なんか、申し訳ない」
「ホッホッ では灯りを消しますぞ」

トルネコがランプの火を消すと小屋の中は真っ暗になった

「また明日、おやすみ」
「おやすみなさい…」

このまま考えても仕方ない、俺も寝よう
明日からはとりあえず一人じゃないから…

朝になってこれが夢である事を少し期待し、俺は眠りについた…
[] [] [INDEX] ▲TOP

©2006-AQUA SYSTEM-