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最終章[6]
石は古代から不思議な力を持っていると言われている。
いや、人が信仰対象の象徴としての偶像を石で形作る事でその力を具現化しようとしてきた事を考えれば、不思議な力が石を通じて表出されていると言った方がいいだろう。

ギザの大ピラミッド・ロードス島の巨像・エフェソスのアルテミス神殿などが石基盤の構築物として世界の七不思議として有名だが、日本でも神社に石が祀られて崇められている。
生活の身近なところでは宝石や墓石を選んだりするし、海岸や川で綺麗な石を探すという行為は誰もがやった事があるだろう。
人は石を求める生き物なのかもしれない。

石の加工品は多数あれど、その中で石板という物がある。
石板とは黒板のように書くか、もしくは削って刻む仕方で文字を残すものだが、加工・使用感・保存の全ての点において紙媒体に劣る故に、現在では目にする事も極めてまれだと言わなくてはならない。

しかしこの世界において石板はとても重要な意味を持つ。
特に彼らにとって石版は自分達の世界へ帰る為の希望の道具だった。
もし石版を通して不思議な力が現れるなら、彼らを帰す為の希望となっても良かったのだ。
が、既にその光は失われてしまった。

愛と友情と絆と嘘と、たった一つの石版を巡る物語。
その結末は運命に委ねられているのか。
それとも運命を導く力が彼らに味方をするのか。
石版はただ静かにその時を待っていた。




作り合わされし世界〜最終章・後編〜
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