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◆YB893TRAPMの物語

風の噂と道化師[1]
異世界の人間が石版を集めることで元の世界に戻れると言う物語。
話はヨシキィによって人形劇として演じられる。
これを本当の話であることを匂わせて人々に噂を広めることにした。

「匂わせるんじゃなくて本当のことをきちんと言ったほうがいいんじゃないか?」
「噂なんていうのはどこか秘密めいていたほうが広まるものですよ」
エイトの質問にサクヤはにやりと笑いながら答える。
「噂を広めるなら人の出入りが多い場所がいいよね」
「そうですね。どこかよさそうな町を見つけ次第取り掛かりましょう」

一向は人々でにぎわう町を見つけた。噂を広めるにはよさそうな町である。
活気にあふれた町は人々が集まりザワザワと大いににぎわっていた。
「僕たちは町の人たちから情報を集めてくるよ」
新しい町にきたら隅々まで調べる。それは旅をする者の習慣のようなものだった。
「町の中とはいえ悪魔のつぼやミミックがいるかもしれないからサクヤは待っててくれ」
セブンはつぼや宝箱に化けたモンスターが襲ってくることがあると説明した。
「そういう擬態を見破るインパスという呪文がある。赤く光ったらモンスターだ」
「自分たちの仲間が多いときは戦うのも手だけど人数が少ないと脅威なんだよ。危ない橋は渡るなってね」
そんなことを言った後セブンとエイトはサクヤを残して情報収集に向かった。


サクヤはヨシキィとともに人形劇を準備を始める。
「おうおう、お前ら誰の許可をもらって仕事をしようって言うんだ?」
そこへ見るからに柄の悪い男が因縁をつけてきた。
「おや、許可が必要だったのですね。それは知りませんでした」
「分かったんなら場所代を払ってもらおうじゃないか」
「すみませんね。あいにく今手持ちがないのですよ」
「なめた口利くんじゃねぇ! この町のルールってのを教えてやるよ!」
男はこぶしを振り上げた。
「この人は知らなかったと言っているんだ。そのくらいにしておくんだな」
誰かが男の手を掴んでいた。見るからに屈強そうな男だった。
その男を見て柄の悪い男は舌打ちをしてその場を去った。

「助かりました。お礼を言わせていただきます。ありがとうございました」
「礼はいい。金があれば飯でもおごってもらうところだがな」
サクヤの礼に男は少しおどけた調子で答えた。
「ええ、それくらいはさせてもらいます」
「おいおい手持ちがないんじゃなかったのか?」
「あの男に払うようなお金は持っていないと言う意味ですよ」
サクヤはおかしそうにそう言ったのだった。


町で知り合った男はダンと名乗った。サクヤはダンとともに町の食堂で食事を取る。
この町に来る途中モンスターと戦い少しばかりのお金は持っていたのだ。
「以前この町に来たときはあんな連中はいなかった。裏に誰かいるかもしれないな」
「困りましたね。この町での公演はあきらめたほうがいいかもしれません」
「そのモンスターに人形劇をやらせようってのかい。大丈夫か?」
ヨシキィも食堂についてきていた。
「手なずけてありますから。でも裏切ったときは遠慮なくどうぞ」
ダンが腰に挿しているナイフを指差してサクヤは言った。
ちょっと趣味の悪い冗談だとダンは思った。
「どうもただの人形劇じゃなさそうだな」
「石版を集めたいのですよ。それを神殿にもって行けば私の願いが叶うのです」
サクヤの言葉にダンは少し眉をひそめた。
「願いというのは私のような異世界の人間が元の世界に戻ることです」
サクヤはそういうと防具袋の中から石版のかけらを取り出した。
「こんな石版なのですがどこかで見かけませんでしたか?」
「いや、知らないな。なんなんだイセカイというのは」
「遠いところです。もし異世界の人間がいたら石版の話をしてあげてください」
そんな会話を交わした後サクヤたちは食堂を出た。


「見つけたぞお前たち!」
食堂を出てすぐ先ほどサクヤに絡んできた男が再び現れた。
「先生お願いします!」
男は自分では敵わないと思い用心棒を連れてきていた。
その先生と呼ばれたのはモンスターだった。
「あれは地獄のピエロだ。強力な攻撃のほか魔法まで使ってくるぞ」
モンスターを見てダンがサクヤに忠告する。
「戦いは避けられそうにないですね。先手必勝です」
そういうとサクヤは一本の槍を振りかざした。
「砂塵の槍。道具として使うと目くらましになるそうです」
地獄のピエロは幻に包まれた。
「あれあれー、自慢の攻撃も当たらなきゃ意味がないですねー」
サクヤが地獄のピエロを挑発する。
「おい、こいつには魔法攻撃があることを忘れるな!」
ダンが忠告したまさにそのとき地獄のピエロがメラミを放つ。

「楽でいいですね。こんな煽りに簡単に乗るなんて」
メラミの炎はサクヤの手前で進行を止め、術者に戻っていく。
「さざなみの剣。道具として使うと魔法を跳ね返す効果があるそうです」
サクヤは燃え上がる地獄のピエロに向かって解説した。
「まだやりますか?」
サクヤは柄の悪い男に向かってにっこり微笑む。

その後ダンはクレージュという町に行くといってサクヤと別れた。
邪魔が入らなくなったことでサクヤは人形劇を始める。

「ねえ、見てよ。変なのがいる」
情報収集から戻ってきたセブンがエイトに話しかける。
セブンが見たものはサクヤの人形劇の呼び込みをしている焦げたピエロだった。
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