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◆8fpmfOs/7wの物語

第5話 タロウの犬決戦
サラボナの町につくとお父さんたちは大きなお屋敷の中に入っていった。
僕は男の子と女の子といっしょに外で待つことになった。
ずっと気になっていたんだけど男の子は誰かの匂いに似ている気がするよ。誰の匂いだろう?
『あ、リリアンがいる。ほらタロウ、かわいい子がいるよ』
男の子が指を差す先にはメスの犬がいた。
「こんにちは! 僕、タロウ」
「はじめまして。私の名前はリリアンと申しますわん」
「リリアンさんはこのお屋敷で飼われているの?」
「そうですわん。私、飼い主のようなお嬢様を目指しておりますの」
「わー面白そう! 僕もお嬢様になる!」
「……それはちょっと難しいと思いますわん。御覧なさい、あの子も笑っていますわよ」
僕の言葉で女の子がくすくすと笑っている。
「飼い犬は飼い主に似るといいます。あなたの飼い主は面白い方なのでしょうね」
「ふーん。飼い犬はご主人様と似てくるんだ」
「そう。飼い犬というのは自然と飼い主の真似をしてしまうものですわん」
「そうなんだ」
「主人だけではなく戦いの相手の技を真似るというもの有効ですわん」
ふーん。僕も真似してみよう。

タロウはまねまねを覚えた!

「あれ、ご主人様が面白いって、僕が面白いってことだよね?」
「そうですわん。お嬢様はあまり直接的な表現はしないものですのよ」
「うう、面倒くさいなー」
やっぱり僕にお嬢様は向いていないみたい。
それにしてもリリアンさんのしゃべり方ってどこか不自然だよ。
どこか不自然なのか犬の僕には難しくてわからないけどさ。

『ルドマンさんがタロウの力を見てみたいそうです』
『どういうこと?』
お屋敷から戻ったピピンさんの言葉に男の子が質問する。
『タロウの話では石版というのは大切なものだろう?』
『うん。そうよ』
お父さんの言葉に今度は女の子が答えた。
『タロウにその石版を神殿に持っていけるだけの力があるのかどうか知りたいというわけなんだ』
『そっか。それでタロウは何をすればいいの?』
『戦っているところを見せればいいんだ。仲間の誰かを相手に戦ってもらおう』
『タロウ戦えるのかなぁ』
『見たところそれなりの戦闘を経験しているようだね』
『わかった。タロウ、お外に行くよ』
ううー、戦うのはいやだけど仕方ないみたい。

『この犬がタロウか。ふーむ、どこからどう見ても普通の犬だな』
うん、僕は普通の犬だよ。
『いや、見た目は普通だが石版を欲しがるとはおかしな犬だ』
おかしくないよ。このおじさんがルドマンさんらしい。

『メッキーが相手になってくれるそうだ』
馬車から鳥さんみたいなモンスターが出てきた。
『バトルスタート!』
始まりの合図とともにメッキーさんが飛び掛ってくる。
僕はすばやく横に飛んでよける。
攻撃が外れてメッキーさんは岩にぶつかった。
隙だらけになったメッキーさんに僕はすかさず噛み付く。
逃げようとするところをなめまわしで動きを封じる。
戦いは僕のペースだ!

そう思った瞬間メッキーさんの周りをきれいな光が包み込む。
『あれは回復呪文のベホイミという魔法なの』
不思議そうな顔をする僕を見て女の子が教えてくれた。
それって何? うわー、傷が見る見るふさがっていくよ!
元気になったメッキーさんが息を吸い込むと口から何かを吐き出してきた。
「うひゃあ! 冷たい!」
冷たい息が襲い掛かってきた! 何でそんなもの吐けるのー?
びっくりしている僕に間髪いれずメッキーさんが攻撃をしてくる。
僕はその攻撃をまともに食らってしまった。
ううー、痛いよぉ……

メッキーさんが再び息を吸い込んだ。
僕はその攻撃を受けるべく身構えた。
冷たい息を受けきると僕は同じ技で反撃した。
さっき覚えたまねまねの特技だ。
あれ? 僕、氷を吐き出してる!
みんなびっくりしてるけど1番驚いているのは僕だよー!
僕、普通の犬じゃなくなっちゃったのー!
何とか気を取り直し鉄の爪で攻撃を仕掛ける。
するとメッキーさんがまた魔法を使ってきた。
『あれはラリホーだ!』
男の子がそう言うのが聞こえたと思うと同時に、僕は急に眠くなった。

寝・ちゃ・駄……目…………だ…………

そう思う気持ちはだんだん薄くなって、僕はその場で眠ってしまった。
僕は負けたんだ。
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