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◆8fpmfOs/7wの物語

第6話 タロウの犬団円
僕は男の子の回復呪文で怪我を治してもらっている。
目を覚ましたとき勝負は終わっていたんだ。
ああ、これじゃ石版はもらえないよー。
『タロウ、ルドマンさんに認めてもらえるよう僕と特訓しよう!』
ううう、大変だー。

「くえー!」
突然メッキーさんが大きな声を上げる。
声のする方向を見ると大きな岩が動いていた。
あれはさっきメッキーさんがぶつかった岩だ。あれ、岩に顔があるよ!
『爆弾岩だ!』
『メガンテをされる前に倒さなくちゃ!』
『待つんだ!』
お父さんが止めるのも聞かず男の子が岩に斬りかかる。
でも、その一撃では爆弾岩は倒せなかった。
岩のモンスターはいまにも何かやらかしそうだ。

あの子が危ない!
僕は本能でそれがとても危険なものだと感じていた。
すなけむりを巻き起こして目をくらませ捨て身で攻撃した!
でも、爆弾岩は倒せなかった。
そして……

爆弾岩はメガンテを唱えた。


僕は大きなダメージを受けていた。
体がばらばらになりそうだよ。息をするのも辛い……
魔法が使われる瞬間、僕はとっさにみがわりを使って男の子をかばっていた。
何でそんなことをしたのか僕にもわからない。

『うう、ごめんよタロウ僕のために……』
僕は町の中に運ばれて治療を受けている。
男の子は今にも泣きそうだ。
『泣かないで。タロウは大丈夫だよ』
『うん、泣かないよ。僕は勇者だもん……』
あれ、この子も勇者なんだ。
この子の匂いはきこりさんのところにいた勇者さんの匂いと似ているんだ。
それに夢の中であったお兄さんにも。
だから僕はこの子をかばったんだね。
勇者さんたちは僕に親切にしてくれた。犬は1度受けた恩は忘れないんだ。
……でも、これで恩返しできたことになるのかなぁ?

『勇敢なタロウはさしずめ犬の勇者だね。彼には勲章をあげなくちゃいけないな』
『あのね、タロウが勲章っておいしいのかって聞いてるよ』
『あははは。タロウには名誉よりもご馳走のほうがうれしいよね』
うん。僕おいしいもの大好きだよ……

数日後、回復魔法のおかげで僕はすっかり元気になっていた。魔法ってすごい!
「もうお体は治りましたのね」
「あ、リリアンさん。うん、もう大丈夫だよ!」
「よかった。あなたみたいな勇敢な犬はそうはいませんわん」
「きっと僕の飼い主が勇敢なんだね!」
「うふふ。きっとそうですわね。飼い主のほうも飼い犬に似てくるものですからね」
リリアンさんの言うことはやっぱり難しいね。

『タロウの怪我は治りましたが特訓するまでもう少し待ってください』
『その必要はない。私はあの犬が気に入ったのだ。
 タロウをリリアンの婿として認めようではないか!』
えええー! よく分からないけどお嫁さんゲットー!
『いや、そうじゃなくて石版をですね……』
『そうだったな。もちろんタロウに石版を渡そう』
そうだった。僕が探していたのは石版だったよ。
石版じゃなくてお嫁さんを探すなんておかしな話だよね。
『タロウは石版を託すべき勇敢さとやさしさを持っている。私の目に間違いはあるまい』
こうして僕は石版を手に入れた!
『でも、もっと強くなったほうがいいから特訓はしようね』
えー! うう、世間は厳しいよー。

『ここが神殿の入り口みたいだね』
『せまいな。でも、タロウだけなら通れるだろう』
僕の訓練中、お父さんは神殿へ続く洞窟を見つけてつれてきてくれた。後はこの奥にいけばいいみたい。
『石版は道具袋に入っているね』
『武器と防具も装備させたよ』
『タロウとはここでお別れか。ちょっと寂しいね』
『それじゃタロウ、がんばっておいで! これは僕たちからのプレゼントだよ!』

タロウは風の帽子を装備させてもらった!

『タロウ最後に聞かせて。この世界は楽しかった?』
うん、楽しかったよ。だって……

『ねえ、タロウはなんて答えたの?』
『楽しかった。この世界も元の世界と同じように、犬と人間が仲良く暮らしているからって』

こうして僕の石版探しは終わり、神殿を目指す冒険が始まった!



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