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◆2yD2HI9qc.の物語

二十八、始まりへの帰路
「なぁ。さっきのモンスターってお前より強いのかな?」
「キィ! キキィキィ」
「メイジドラキーっていうのか。色違いなだけじゃなくて魔法まで使うし、やっぱり強かったんだろうな」
マウントスノーからだいぶ離れた後、ヨウイチは初めて攻撃魔法というものを経験します。
ドラオをピンク色にした外見だけでなく、不思議な炎の波を起こしてきました。
炎の波はメイジドラキーのつぶやきの後に起こったので魔法だと気づいたのです。
「剣で殴ってもなかなか傷をつけられなかったけど、負ける気はしなかったよ。なんてったってブルジオさんにもらった革の鎧があったからな!」
「キキ?」
「いや、熱かったよ。炎がこう… バァーっと。お前も見ただろ? これが旅人の服だと思うと恐ろしいよ。…けど鎧の下は普通に布で出来た服だし、やっぱり恐いことに変わりは無いかも」
言いながらヨウイチは銅の剣を抜き、眺めます。
刃は若干こぼれており、切れ味を感じることが出来ません。
そもそも銅の剣は斬るというより殴りつけるふうに使うので、鋭い刃ではないのです。
「銅の剣… 何度も助けてくれたんだけどそろそろ限界だよ。そういったって、新しいのを買う金もないし…」
ふぅとため息をついてから、銅の剣を鞘へ収めます。

「まぁ、とりあえず今は大丈夫そうだからいいか」
「キキィ?」
「これからか… 神殿の手がかりはなんにも無いし、いちどクレージュへ帰ろうか。女将さんも心配してるだろうし」
「キー! キー!」
「ははっ。俺も早く女将さんのご飯を食べたいよ!」
後ろに大きな山が、だんだんと小さくなっていきます。
「この石版と… どこかにある神殿があれば元の世界に帰れるんだ、きっと……」
ドラオはふわふわ軽く飛んでいましたが、ヨウイチの足元には一歩二歩と踏み込めた後がうっすらと残っていました。
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