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◆2yD2HI9qc.の物語

二十四、名もない洞窟
あくる日。
町は初めて見たときと全く違って雪はほとんどなくなっていました。
気候も陽のおかげか少し暖かく、あの吹雪が嘘のようです。
ブルジオの家で一泊した二人はぬかるんだ土をじゃぶじゃぶ踏んで北の洞窟へ向かいました。

「キィーキ−キー!」
「え、だめだよ。石版をもらうんだから。革の鎧だって借りたし、持ち逃げなんて出来ない。それよりほら! 剣と鎧、似合うだろ?」
「キィ…」
「……おまえ、そんなにすごろく場いきたいのか。でもなんで知ってる? 町から出たことないのに」
「キ? …キー キーィ」
「知らないけど知ってる? なんだそれ。この世界の常識ってやつか? モンスターの本性ってやつか?」

洞窟は町からあまり離れてはいません。
話しながら歩いているうちに、丘へぽっかり口を開いた洞窟へとたどり着きました。

「ここみたいだ。なんか薄気味悪いな」
「キキー」
「うん、暗くならないうちに帰ろう。中は一本道で短いっていってたし、すぐさ。それにスライムナイトっていったってスライムなんだろ。たいしたことなさそうだ」

ランプに灯りをともし洞窟へと入ります。
溶け始めた雪や暖かい日差しのせいでしょう。
中はとても湿っていて嫌な雰囲気です。

「うわぁ。なんかこんなとこ、ずっといるのはヤだな…」

ところが、ヨウイチの予想と違って二、三分まっすぐ進んだだけで最深部へと着いてしまいました。

「あ、あれ。なんだもう奥か…」
「なんだおまえ!」

ドキリとして声のした暗がりを見ます。

「マウントスノーの人間か? 貢物ならさっさとよこせ」

そこにはおおきいスライムと鎧を着た人間に近い、背の低いモンスターがいました。
一匹だと思っていたのでヨウイチはあせってしまいます。

「あ、俺は… すごろく券を渡しに来たんだ」
「すっ?! すっ、すごろく券!!」

券の束を差し出すとスライムナイトは素早く奪い取りました。
束を数え、それからヨウイチとドラオをじろじろ見ます。

「間違いない本物だ。俺は早速遊びにいきたいが、お前が邪魔だ」
「なら、俺はもういくよ」
「ちがうちがう、そういう意味じゃない」

人間みたいなモンスターがおおきいスライムにまたがり、スライムナイトが言いました。

「お前の着てるもの持ってるもの、全部いただくとする。だから生身は邪魔だ。全部置いて帰れ」
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