◆2yD2HI9qc.の物語
二十二、凍えるやま
何度もモンスターと戦い、商人や旅人と挨拶を交わしながら順調に進んできました。
何日、何十日かかったかわかりません。
二人は疲れていましたが、目の前の景色にそれはそれは感動していました。
「この山にマウントスノーの町があるらしい」
目の前はいちめん真っ白な山とふもとに広がる森に覆われています。
話に聞いていたマウントスノーがある山にたどり着いたのです。
「キィ」
「うん。すごいな、山や周りの大地だけに雪が積もってる」
「キキー」
「そうだと思う、絶対さむい。
けどお金ないし、節約で町に寄ったりしなかったからな。
お前はどうかわからないけど、俺はこんな薄っぺらな服で…」
途中いくつかの町を横目に見ましたが節約のためだと立ち寄ったりはしませんでした。
「けど大丈夫だろ、たぶん。山頂に登るわけじゃないんだし、ふもとからそんなに遠くないって聞いたし。それに近くまできてるのにそんなに寒くないだろ? けっこう平気でいけるんじゃないかな、たぶん」
不安はいっぱいありましたが、それでも進まなければなりませんから二人は森へと入ります。
森の中はしっかり路が作られ、それにそんなに寒くもありません。
もしかしたら平気なんじゃないかと二人は顔を見合わせ、どんどん進んでいきました。
「さ、さむい……」
「……」
ヨウイチは自分の甘さを後悔していました。
森を抜け雪の積もる山を登り始めた最初はよかったのです。
足をとられ汗をかき、暑いとさえ感じていました。
ですが体が慣れてくるとそれはもう寒くてたまりません。
毛布で体を包みますが多少マシなだけでした。
ドラオはというと、寒さで凍ってしまったかのように口をつぐみ道具袋の中へ身を隠しています。
歩みは極端に遅くなり、きつくなる山の斜面はなかなか思うように進ませてはくれません。
「おい。す、少しはしゃべって体を温めたほうがいいぞ…」
「……」
「…ったく。しょうがないやつだな…」
風もびゅうびゅう吹き、細かい雪の粉が舞い、視界を遮ります。
時々やってくる強風に体が押され倒れそうになりますがなんとか堪えます。
そしてドラオには言いませんでしたが、この時点で方向を見失っていました。
雪に覆われどこに路があるのかぜんぜんわからなかったのです。
後ろを見てもどこを見渡しても飛び回る粉雪に隠されてしまいます。
「はぁ… 俺はなんで… こんなことしてるんだろ…」
山に入って丸二日、ほとんど食べず眠らずで進んできましたが一向に町は見えません。
夜だって早く町へ到着するために這いながら進んだのです。
ですがあまりの寒さと疲労で頭はもうろうと、あんまりよく考えられなくなってしまいます。
もう、いいじゃないか。
ここまで頑張ったんだ。
ここで眠って目が覚めれば、きっと元の世界だ。
これは夢だ、夢に違いないんだ。
甘い考えが頭をよぎり、ですがどうしても振り払うことが出来ず、やがてヨウイチはその場にうずくまってしまいます。
「ラーメン… 喰いたいなぁ…… あ? あの灯りは、屋台かな。おおーい、客が、ここにいる、ぞぉ…………!!」
ハッと体に力が入り勢い良く立ち上がり、その灯りへ向け雪をもぐり進み始めます。
そうしてとうとう、どうやら人気のある場所へとたどりついたのです。
さっきまでの疲れや眠気がまるでなくなって、もう頭の中はラーメンでいっぱいでした。
「あっはっ!!」
感覚で一時間くらい、実際は十五分です。
思わず笑ってしまいました。
「町だぞ! おいドラオ!! ついたんだよマウントスノーに違いない!!」
道具袋がもぞもぞしてドラオが顔を覗かせます。
町は、すっかり雪に埋もれていましたが窓から漏れる明かりはとても暖かく感じました。
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