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◆2yD2HI9qc.の物語

二十一、私の世界
まぶたを開けると元の森の中でした。
火は消え、陽は昇りすっかり朝です。

「ふぁぁ…… っと。 二人で寝ちゃったのか」
「キ… キィ…」

はっと気が付き荷物を調べます。
荷物はどうやら無事なようでとりあえず安心しました。

「魔物にも泥棒にも襲われなくてよかったよな。
 完全に無防備だったし」
「キ?」
「大丈夫だ。 さー、いくか!」
「キィ!」

二人は立ち上がり焚き火へ土をかぶせ、森の出口を探し始めます。
しばらく森を迷い、もう出られないのではと思ったところでようやく外の景色を見つけました。
そこを抜けると目の前には路が横断し、その路へ乗り北へと向かう事にします。

「どれくらい遠いんだろうな?」
「キー」
「うーん、そうだよな。 お前はほとんど町から出たことなかったんだっけ」
「キィキィ」
「はは。 そうだな、歩いてればいつかはたどり着くか」

均された土を踏み、とにかく進むことにします。
しばらく歩いてヨウイチが思い出したようにドラオに話しかけます。

「ああ、そういえばシエーナ、だっけ。あの町で会った女の人覚えてるか?」
「キィ、キキ」
「そうだった。お前が最初に話かけ… ちょっかいだしたんだもんな」
「キ!」
「怒るなよ、ほんとだろ? でさ、ゲレゲレもだけどあの人もなんか周りの人たちとは違ったよな。なんていうか、こう…」
「キ? キィ… キーッ!」
「な、馬鹿なこというな! 鼻の下のばしてなんかないし別にそんなやましいことなんか…!」
「キ〜キ〜〜」
「ぬ… おまえ、ちょっと止まれ、いいから」
「キー!」
「あ! おい逃げるな!」

からかいながらドラオがすいすい空中を泳ぎ、ヨウイチは合わせて飛び跳ねながら追いかけます。
三分くらいそうやって遊んで、ふとヨウイチがいいました。

「もっと話を聞いておくべきだったかも、しれない。あの時は違うかもって思ったけど… "私の世界"ってどういう事なのか、もしかして俺と同じなのか……もう一度、どこかで会えたらその時はちゃんと聞こう。…俺は、一人じゃないのかって」

ドラオがいてくれるから今はなんともありませんでした。
ですが夜になり一人でおきているとどうしても考えてしまうのです。
これが元の世界で一人だったなら、きっといまよりぜんぜん平気でした。

「そういえば名前も聞かなかった」

顔を上げ周りを見渡します。
遠くには薄色の山がそびえ、路はまっすぐに東西南北、それぞれ運んでくれようとしていました。
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