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◆2yD2HI9qc.の物語

十九、眠りのまち
戦いを終えた二人は少し休むことにしました。

「ダンに聞いた話の受け売りだけど、魔法っていうのはな。魔力を持つ人やモンスターが、その魔力を使って特別な力で攻撃したり癒したりするものらしい」
「キィ、キー?」
「うーん、魔力は… ごめん、俺もそこまでは覚えてないんだ。で、さっきくらげみたいなやつが使っていた魔法はホイミっていって、傷を治す魔法だそうだ。魔法を使うには魔法の名前を口に出さなきゃいけなくて、お前に塞いでもらった。だからホイミは使えなかったってわけだ」
「キキー! キキィキキッキー」
「え。なんだ、お前知ってたのかやつらの名前! えー、もぐらがいたずらもぐらで、くらげがホイミスライムか… 変な名前だ。てか、ホイミスライムはそのまんまじゃないか」
「キ」
「よく知ってたな。モンスターだからか?」
「キキッ。キィ〜」
「知らないけど知ってた……? よくわからないけどやっぱりモンスターだよ」

長く人間と暮らしていたものですから、そういった部分が潜んでしまっていたのでしょう。
何度かのモンスターとの遭遇で意識の深い部分が目を覚ましたのです。

「けど、突然おれを襲ったりしないでくれよ。ははは」
「キ… キ!」

ドラオは笑わず、だけど強い返事を返しました。

休憩を終わらせ、二人は森の探索を続けます。
森は、感じた以上にスカスカでした。
ヨウイチはここでよやく不安を覚えます。

「ほんとにあるのか…」

狭いとはいえある程度の広さを持った森です。
何度かの戦いを経て、周りはすっかり暗くなってしまいました。

「これ以上は… 松明を持ってても危険だ。しょうがないから今日はここで寝よう」
「キ!? キィキィィ」
「仕方ないだろ。どこから出られるかわからないんだ。下手に動くとまたモンスターに襲われるし」
「キィ…」

野宿の準備を済ませ、保存食を食べます。
クレージュの保存食と違って少し甘い感じがします。
町によって味付けが違うのでしょう。

「さて… 今日はお前から寝ていいよ」
「キー」

ドラオが横になり、ヨウイチは銅の剣を抱え座り炎を見つめます。

「結局、町はなかった… うそだったんだろうな、期待してたのに…」

少し、気が抜けてしまいます。
と同時にとても眠たくなって、ヨウイチはそのまま目を閉じてしまいました。

「うぅむ… あ!」

大きな声を出してヨウイチは飛び起きます。
ハッと周りを見渡すと見たこともない景色です。
いえ、景色というよりはどこかの町にいたのです。

「え、え、え??」
「キィ… キッ!?」

隣で寝ていたドラオも驚き飛び起きます。

「な、なぁ。俺たちシエーナの北で眠っていたはず… いや俺は見張って… あぁ、急に眠くなって寝てしまったんだ…」
「キー?」
「ああ。これが商人の言ってた町… なんだろうな!」

驚きはしましたが、ヨウイチは嬉しくて仕方ありませんでした。
こんな不思議な世界でこんなに不思議な体験が出来たのです。
それに商人の話が本当だったということは、石版や神殿の話だって本当かもしれません。
気持ちは高ぶり、大きな期待を抱くのでした。
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