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◆2yD2HI9qc.の物語

十七、うわさ
日が変わり昼、二人は買い物や用事を済ませシエーナの門にいます。
ヨウイチは買い物がてら町の人に話を聞いて回っていました。
石版の話をダンから知って以来、噂ではなく本当なんじゃないかとずっと考えていたのです。
ここシエーナでも聞いて回り、商人から貴重な話を聞くことが出来ました。

「ここだけの話、マウントスノーに石版を持っている金持ちがいるらしいぜ。その石版をどこかの神殿に捧げると、願いがなんでも叶うそうだ」

話を聞いて、ヨウイチは石版を持つ人に会おうと決めました。
神殿についてはそれ以上の話は知らないらしく聞くことが出来ません。
まだ嘘か真かわかりませんが、今のヨウイチには元の世界へ戻るための唯一の手がかりになります。

「次はマウントスノーだ。遠いらしいから覚悟しろよ」
「キキーキ?」
「いや。途中に立ち寄れる町はないそうだよ。かなり北にあるらしいから寒いって話だ」
「キィ…」
「そんなに気を落とすなよ。ほら、こんなに食料だって薬草だって買い込んだ。水は樹木から採れるって聞いたし大丈夫だろ。毛布だって買ったんだぞ」
「キッキッ」
「ベッド? そんなの我慢しろよ。それよりもう一つ、いい事きいたんだ」

石版の話のほかに別のうわさも聞いていたのです。
食料を売っていた商人が教えてくれました。

「うわさ? そうですねぇ…噂じゃないんですが商人仲間の話でしてね。ここから北に進んだ森の中で不思議な町を見たって言うんですよ。あの森には町なんてないんですけどね。だいたい、あの男はいつもホラふ…─」

ヨウイチは噂や不思議な物事が好きでした。
商人の話を全部聞かないうちにドラオをつかまえ、出入り口までやってきたのです。
ドラオは興味がないので反対しましたが、ヨウイチの強引な押しに負けました。

「さー出発だ!」
「キィ…」

広い大地を目の前にして、能天気なヨウイチと不満なドラオは北へ向けてシエーナを発ちました。
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