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◆2yD2HI9qc.の物語

十六、ドラオのたから
ドラオは出店ではないよろず屋にいました。
この世界の人たちは悪意のあるモンスターとそうでないモンスターの区別が付くようです。
童話のお姫様が頭に載せる、そんなような冠を店主と一緒にとぼけた顔で自分とあわせています。

「お客さん似合いますよ!」
「キィ?」

ヨウイチはあきれながらドラオと店主のやりとりを見ていました。

「キィ」
「おや、お気に召しませんでしたか? それでは… これはどうです?」
「キィキィ!」

緑色のガラス玉がぶらさがった小さなちいさな首飾りを店主につけてもらい、ドラオは満足したようです。

「どうです、お気に召したようですね」
「…キィ」
「ええと… お買い上げですか?」
「キィキィ、キィ」
「えー… お買い上げですね! 80ゴールドになります!」

あわててヨウイチは二人に割って入ります。

「ちょ、ちょっと待った!」
「ああ、お客さん申し訳ない。このネックレスはこの方が」
「い、いえ… 友達で。ドラオ!」

声が聞こえないように小声で話します。

「お前わかってるのか。お金はそんなにないんだよ」
「キ!」
「いいか。俺だってアレコレ買い物したいんだ。
 でも我慢してるんだぞ? なのにお前─」
「キィー……?」
「う、おい。や、やめろよ、そんな目で見るんじゃない…」
「キー」
「く…… わかった、買ってやるからもうその目はやめろ…」
「キッ!」

ヨウイチの言葉にドラオがぱたぱた飛び回ります。

「いつもはなんにも考えてないような目のくせになんという…
 すみません、80ゴールドでしたよね。これで…」
「ありがとうございます、よくお似合いですよ!」

お金を支払い店を出ると、ドラオはネックレスをまるで大勢にみせつけるかのように胸を張って飛んでいます。

「はぁ… こんな事はこれでもう最後だぞ?
 さて、宿屋を探して今日はもう休もう。
ちょうど陽も傾いてきたし」

バザーの雰囲気だけを楽しみながら宿屋を探します。
たくさんの人が楽しそうに出店をまわり、その雰囲気は二人の疲れを軽くしてくれました。
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