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◆2yD2HI9qc.の物語

十四、初めてのたたかい
あくる日、ヨウイチは寝不足でドラオはすっきりした顔で歩き始めました。

「仕方ないだろ… 俺だって気が回らなかったんだから」
「キーッ!キーッ!」
「わかったわかった。これから気をつけるからもう言うなよ…」

昨晩のことをドラオと話しながら歩いていきます。
一時間ほど進むと、前触れもなく森がなくなりひろいひろい広野が現れました。

「おぉー!」

遠くには山があり林があり岩がありおおきな空があり、遠くにはまた森も見えます。
その地には人が踏み均した道が続き、まるでこの旅を最後まで導いてくれるかのようでした。
ヨウイチは自分で歩き見つけたその地がとても気に入ってしまいました。
ドラオも高く低く飛び回り喜んでいるようです。

「やったなぁ! 同じ道ばっかりで森から出られなんじゃないかって不安だったんだよ!」
「キッ!」
「いいなぁこういうの。なんか、あこがれだなぁ」

二人は感傷に浸りながらゆっくり歩きます。
ところがいいことばかりではありませんでした。
途中すれちがった旅人が教えてくれたのです。

「ここから先はモンスターが多いから気をつけなさい」

棒切れを強く握り締め、今になってぐぅぐぅなる腹に保存食を与えながら進んでいきます。
そのうち、小高い丘を越えた辺りでなにかが動く気配を感じ、それはまさにモンスターでした。

「おいドラオ!」
「キ…」
「いいかビビるな! 俺が戦うから、声で俺を助けろよ!」
「キキ…!」

ドラオは逃げ出さずヨウイチの話を聞き従ってくれるようです。
ヨウイチはといいますとリュックをおろし、棒切れを両手で握ってモンスターへと近づきます。

「ん、あれはスライムってやつだな… ああ、二匹もいる…」

ダンの教えを思い出します。
じりじりと近づくうちにスライムも二人をみつけ、ぷよぷよ近づいてきます。

「くるならこい! 前の俺とは違うんだ!」

スライムは表情一つ変えません。
そうこうしているうちにお互いの距離まで近づきました。

「こ、こっちからやってやる!」
「キー!」

ヨウイチは思いきって一匹のスライムに棒切れを叩き付けました。
すると、たったそれだけで、スライムはぺちゃんこになって動かなくなってしまいました。

あっけない事に動揺しているともう一匹のスライムがジャンプしてヨウイチに噛み付こうとしてきます。

「キッ!」
「っ! いててっ!」

ドラオの声に反応してよけたつもりでしたが、意外に鋭い歯が腕に切り傷を作ります。
痛みを我慢して棒切れを握り直し、さっきと同じようにスライムを叩きます。
今度もやっぱりぺちゃんこになって動きません。

始めての戦いに勝ったのです。
わぁわぁと二人で大喜びし、スライムの死骸を見てみます。
気持ちの悪い光景でしたが勝利の気持ちのほうが大きくて、そんな事はなんともありませんでした。
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