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◆2yD2HI9qc.の物語

十二、足りない準備
町の門をくぐり目の前の森を歩いていきます。
いままでとは何か違う、どこかうわついた心でした。

「ところで… お前はこれからどこへいくんだ」
「キ? キィキー」
「えぇぇ、お前。俺と一緒に旅するっていうのかよ?」
「キィ」

ドラオはさも当たり前といった顔でふわふわします。
ヨウイチはちょっと戸惑いましたが、一人旅は心細いので納得しました。

「あ、そうだ」

森の道でちょっと広くなった草地に腰掛け、女将さんにもらったリュックを開きます。
もらったのは良かったけれど、何が入っているのかはぜんぜん聞いてなかったからです。

「ええと… これは薬草、水筒、保存食…」

リュックの中には旅に必要な道具がそろっていました。
その中には手紙も入っています。

『ヨウイチ。
 少ないですがお金も入れておきました。
クレージュから近い町はシエーナです。
そこで足りない道具や装備を整えてください。』

「女将さん…」

リュックの奥に大事にしまわれた小さな袋には数百ゴールドのお金が詰め込まれています。
その袋をぎゅっと握り締め、そっとリュックへしまいます。

「なぁドラオ。何を探して何があるのかはわからないけど、また絶対帰ろうな」
「キィッ」

リュックを背負い、再び歩き始めます。
たくさん詰め込まれているので重いのですが薪割りのおかげか苦になりません。
そんな事も思いながら歩いていましたがふと、気づきました。

「あ、あれ」
「キ?」
「そういえばおれ… 武器持ってないや…」
「キー?!」
「本当だ。まいったなぁ、今から戻るなんてかっこ悪いし…
 シエーナって町までどうにかするしかないぞ」

あわてて周りをきょろきょろしますが太い棒切れしか見つかりません。

 初日からこれじゃあ、これから思いやられてしまう。
生きて元の世界へ戻れるのだろうか。

仕方がないので棒切れを片手に握り、今度は警戒しながら道を進んでくのでした。
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