修士◆B1E4/CxiTwの物語



【世界怪奇伝承 [55]】

最後を締めくくるのはやはり、栄光ある勇者の物語だ。

一般に勇者の物語は、勇者とピサロが真の敵エビルプリーストを倒し、終わる。
しかしこの物語には、一般に知られている冒険譚のほかに、
あまり語られない、奇妙な冒険譚が一つ、あるのだ。
「怪奇伝承」と銘打った本書の最後に、これほど相応しい話はないであろう。


ピサロが勇者の仲間となった後のこと。
預言者の町ゴッドサイドに立ち寄った一行は、
町に築かれた祭壇に、ある日突然、大穴が開いたことを聞かされる。
困惑する神官たちを見つつ、一行は意を決し、大穴を降りていった。

彼らが降り立った地。そこは巨大な空洞だった。しかしその先には、
様々な世界の切れ端が脈略無く繋がる、この世と思えない光景が続いていた。

不思議な世界の中、戦闘を重ねたどり着いた終着点。
そこは天高く聳(そび)える山の頂であり、眼下には、
沼地が点在する、暗く淀んだ大地が広がっていた。
そして、彼らの目の前では、この世界の生き物とは思えない、
奇妙な二匹の怪物が言い争いをしていた。

二匹の後ろには小さな火口が開いており、
怪物に促され火口に飛び込むと、一行は地上世界に生還した。

そして不思議なことに、ピサロが魔界に戻った途端、
祭壇の大穴の下は、どこにも続かない、ただの空洞となってしまった。

その後、この世界を見たものは、未だ現れていない。