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[DQ4]11泊目>>628[1]
腰まで届く桔梗色の髪をブラシでとかして艶をだす。軽く化粧を施し頭からシルクのローブを身に纏う。セットしたあと手に気品ある緋色の天鵞絨に包んだ水晶玉を携える。
ドレッサーの鏡に写る自分の姿はまるで占い師の様な風貌。否、今の私は占い師だ。
目が覚めた時、知らぬ場所にいた。ココハドコワタシハダレと軽く混乱していると丁度よくドアから現れたのが…。
ちらり、とベッドでだらしない格好で寝ている踊り子マーニャを見た。
踊り子マーニャとくれば私はマーニャの妹、占い師ミネア。そう、何故か私はミネアになっていたのである。もうかれこれ一ヶ月たつと思う。
私には年子の姉がいる。背丈も顔もそっくりだが姉は運動好きで明るくムードメーカー。対する私は占いが好きな大人しいタイプ。
丁度小学生高学年に流行っていたドラクエ4のキャラクター、モンバーバラの姉妹の設定が似ていると良く言われた。
ドラクエ4。そう言われたからプレイした。姉ちゃんは見ているだけだった。確かに似てるねって二人で話していたことがある。
顔は似ていても性格は真逆だから喧嘩やぶつかり合いも多かったし、姉ちゃんなんていなければいいなんて何度も考えた。
そんな私たちも歳をとるにつれて生活スタイルも変わっていった。
私は地元の専門学校を卒業してから地元で就職。姉ちゃんは都会の大学へ行き卒業してそのまま就職した。
仕事は忙しい、だけどやり甲斐はあると以前電話で話してた。
大型連休がとれても遊ぶことがメインになってるようで、地元には一年に数回程度にしか帰郷することしかなくなった。海外旅行に行った時はお土産だけは荷物で送ってくれてた。
仕事も遊びも楽しんでやる姉ちゃん。最後にうちに帰ってきたのは結婚すると将来の旦那さんを連れてきた時かな。もう随分前だ。
小さい頃から一緒に過ごしていた姉ちゃんがいつの間にか私の知らない他人の妻になり、やがてそのうち母になるなんて身内としては複雑だけれど…。…姉ちゃん最近連絡を寄越さないな。きっとまた忙しくしているんだろう。
あ、もう仕事の時間だ。行かなければ。私は寝ているマーニャを起こさないようにこの宿屋兼踊り子の寝所から離れた。

私は小さいながらも街の隅に店を構えていた。お店っていってもテントだけど。
野外でやってもいいけど天候に左右されるのが難点だったので。
テント内の光源は数本の蝋燭だけにしている。お香も焚いて雰囲気作り。
お客さんとは基本的には一対一。カップルを相手することもある。
テントの外には既にお客さんは何名か待機中。準備が整い次第お客さんを招き入れた。
私は小さい頃から占いが好きで占星術、風水、血液と様々な占いを勉強してきたけどタロットは一番得意だ。姉ちゃんは占いは見向きもしなかったけど。
幸いドラクエ世界のタロットは現実世界と一緒だから占い方法も一緒だ。
私はお客さんに悩みを聞いてからタロットをシャッフル、その悩みに似合った展開をし、ガードから意味を読み取る。それを悪い内容ならやんわりと、良いようならそのまま伝える。
もう一つの占い、水晶占いも人気。これは「ミネア」になってから見えるようになったんだよね。水晶から未来が見えるなんて嘘臭かったけど実際見えるんだからびっくりだ。
透視ではないから部分的なものを伝えるだけどね。
今が変われば未来が変わる。自分が変われば未来が変わる。これは私の持論。

占いはあくまでもより良い未来への手助けに過ぎない。それに頼り過ぎたり占い内容を丸のにしてしまったりしてしまうのは違うと思っている。
占いの捉え方は人それぞれだからそれはその人に任せる。
そうこう考えているうちにお客さんはひっきりなしに入る。いつもの倍かな?それは今日でお店を終うからだと思うんだ。別れを惜しむ人も多い。だけど明日から父さんの仇討ちにマーニャと旅立つんだ…。
翌朝私とマーニャはモンバーバラの街を離れた。
父親の仇討ちの旅に…。
私はミネアではないが外見はミネアなのでマーニャは普段変わりなく話しかけてくる。どうやらバレていないようだ。まさか外見がミネアで中身は別人だなんて理解していないとは思うが。
私はゲーム内のミネアの言葉使いを思い出しながら言葉を選ぶ。姉ちゃんと呼んできた私に姉さんと呼ぶのは照れがあるがそれは慣れだ。
性格もちゃらけた姉をみるしっかりものの妹のように。
私たちはモンバーバラを離れ、モンスターと戦いながら北へ向かう。途中生まれ故郷コーミズに寄り、飼い犬のペスタと戯れたり洞窟に潜り父さんの弟子のオーリンを仲間にして…とゲームでいう第四章をリアルに体験してゆく。

私はこの物語の結末を知っている。私にとってこの旅はドラクエとしてプレイした『ゲーム』だからだ。
これから何処へ行き、誰と対面して敗れ、逃げるようにして何処へ行くのか…。
だからこそ岬の御告げ所の占い師にあなたはこれから先を視ていると指摘されたとき頷いた。マーニャはそのことに驚いていたが私は冷静であった。
「そう、分かっていた。今の私たちではバルザックに勝ち目のないこと…ううん何でもないの。姉さん」

そして、本懐を遂げられないまま私たちは大陸を離れる―――。
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