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4の人◆gYINaOL2aEの物語

???[2]
「良いんだ」

この決断は…もしかしたら間違っているのかもしれないな、と思う。
間違っていたら、なんらかの形で俺は何かを失ってしまうのかもしれない。
だけど。

「俺は、もう戻らない。俺は、さ。ソフィア。俺は…さ…その…ソフィアのことが…」

「私は貴方が好き」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
先に言われたあああああああああああ!!酷い…男に格好つけさせろ!!!」

「いつ言ってくれるのかと思ってたけど…。
待たせた罰。格好なんてつけさせない。貴方は格好悪いままでいなさい」

「そんな、ひどい…」

よよよと泣き崩れる俺を見て、ソフィアはうふふと笑う。
その笑顔が可愛いから、彼女の意地悪も容認してしまいそうになる。

「貴方はアリーナが好きなんだと思ってたけど」

「アリーナは可愛いよね」

「……」

「しまった、つい本音が……」

「……………………………」

「嘘です。ごめんなさい冗談です」

「バカ」

拗ねる姿も可愛いよなあ!そう思うだろ!
けどなあ、もうちょっと色気があっても良いような気もするんだけどなーこういうシチュエーションは。
いっそ、このまま押し倒s…押し倒せればもしかしたらそういう事もあるのかもしれないけど。
なんだろう。なんだろうな!嬉しいのかな!!
ういー俺みたいなキモメンがこんな可愛い彼女を…いや、可愛いだろ?頭はもこもこしてるけど。
あんまり羨ましがる気配を感じないのは気のせいだろうか…?

「じゃあ、とりあえず一緒に寝ようか」

「バカ」

追い出されました。
はあ…まあ、良いか。焦る事もあるまいよ。
あの世界で生きると決めた。
結局の所…元の世界に戻らなければならないとは思っていたが、戻りたいとは…思っていなかったのだ、俺は。
だって、こっちの世界にはソフィアが居る。
向こうには誰が居る?勿論、親兄弟もいた…ような気がするけれど、少なくとも…ソフィアは居ない。
許されるのか。それだけが俺には解らなかった。…そして、怖かった。
何を恐れていたんだろう。きっと、誰かに、何かに…怒られるような気がしてた。
そんなことは、ありはしないのに。
俺の人生は俺が決めなければならない。それは――何処で生きるかをも、定めることができるのだ。
責任は大きい。だが、ただ――それだけだ。大きな責任があるだけで、その選択自体は責められるものなどでは…無いのだ。
ソフィアと――添い遂げられれば良いが、いかんせん俺の器ではそれは難しいのかな…。
だけど、努力はしたいと思います。ええ。


今の俺なら何にでも勝てる気がする。
そう思っていた時期が俺にもありました。

「だから鳥より卵の方が偉いんだって!」

「そんな訳あるか!卵より鳥の方が偉いに決まってる!」

眼前で繰り広げられる恐ろしい規模の喧嘩に半ばちびってる俺。
ドラゴン○ール並に岩石が飛び交ったかと思えば、小さいのが物凄い勢いで炎を吐く。
なんだあれは。人間じゃないのか。
しかも喧嘩の中身が恐ろしく…内容が無いように見えるが彼らにとっては大事な事なのだろうか。
ソフィアもとてもじゃないが間に入れないと震えている。
あのソフィアが震えるんだぞ!これがどういう事か解るだろうか。
彼女が武者震いをする相手である、というのがどれほどの事か、正確に解るのはラブラブな俺だけだろう。フフン?
調子こいた俺に次元を超えた罵声が聞こえる(ような気がする)
ハハハ!文句があるなら俺を倒してみろよ!

めりぃっ!!

流れ岩に潰される俺。
…すんませんでした。
なんとかかんとかソフィアに救われたので、改めて考える。
どうしたものか。何とか話をしなければ進まない。その為には喧嘩を止めなければ。
彼らは鳥と卵どちらが偉いかで議論しているらしい。
鳥と卵。どちらが偉いのだろうか。
鳥がいなければ卵は産まれない。だが、卵がなければ鳥は産まれない。
あれ?しかし考えても見ろ。
卵から産まれるのは鳥じゃなくてひよこ(雛)じゃないのか?
卵は鳥から産まれて、ひよこは卵から産まれて、鳥はひよこが成長する。

「つまり本当に欠かせないのはひよこなんだよ!!!」

「な、なんだってー!!」

鳥男と卵男がハモる。
ソフィアはきょとーんとしている。まあそのリアクションが普通なんだろう。

「三つ巴となると決着をつけるというのも難しいなチキーラ」

「実に。ここは一旦休戦としようかエッグラ」

「そうしようそうしよう」

がしっと硬く握手する俺たち。
ノリだけで生きてる俺だけど良い事もあるんだな。
なんだかその後は妙に仲良くなってしまい賑やかに過ごした。
時折思い出したかのようにまた喧嘩を始めようとするのには参ったが。

「そうかそうか。お前らはお前らの世界に戻りたいのか」

「ならその火口に飛び込んだらいいぞ」

痺れを切らしたソフィアが訊ねると、彼等はあっさりとそう答えた。
火口に飛び込むというのも恐ろしい話だが…この歪んだ世界ならばそれもありうるだろう。
何より俺は彼らを信じている。いや、話してみるといいヤツらなのだ。

「ついでにサービスだ。世界樹にいってみろ。鳥に感謝しろよ」

「むがー!じゃあ俺はこの卵をやる!卵に感謝しろよ」

「ちっ。ならば俺はこの剣だ!なんといっても魔界製だぞ!」

「人間に魔界製の武器が使えるものか!賢い俺は魔界の兜を」


な?いいヤツラだろ?
なんだかお土産までもらって悪いなあ。

「…もうっ!」

俺があんまり彼らと仲良くしているもんだからソフィアは膨れて先に火口に飛び込んでしまう。
慌ててその後を追…おうとした。だが、その時後ろからかかった声に、俺の足は止まってしまう。

「お前。自分が誰だか解っているか?」

奇妙に…シンプルな問い。
突然何を言い出すのか、と笑いながら振り返った俺の前には、さきほどまで笑ったり、怒ったりしていた二人が、まるで能面のような無表情で立っている。

「…え?」

「自分の名前を言えるのか?」

俺の…名前?
バカな!何を言ってる。俺は…俺じゃないか。今まで、何度も何度も…仲間達に呼ばれてきた!

「何て、呼ばれてきたんだ――」

――あ。
そう、か……俺……。

「一度も…名前で呼ばれた事、無い…君、とか…お前とか…貴方とか…」

「責めるな。皆、仕方が無いのだ。世界そのものに影響を受けている以上、無意識の内に不自然を感じなくなってしまっている。そう、決められている」

決められている…?
なんだそれは。一体、誰にだよ!?

「もう、解っているんだろ?」

――マスタードラゴン。

「そうだ。我らは、この世界は狭間だからな。こうして忠告もできる。
あの世界に戻るつもりなら止めておけ。先で待つのは名も無き生、個人の崩壊だ。
自覚は無いか?自分が、自分で無くなるような感覚に」

ごくりと喉が鳴る。
そうだ――ある。心当たりが…あって、しまう。

「元々、お前はその男の意識として稼動し、そして離脱する予定だった。
だが…飽いたのだな、あの竜が。同じ遊戯を何度も続ければ、それも当然だと思うが」

「故に、今、お前は此処に居る。哀れな混じり物よ。我らはお前に同情している。
今なら――元の世界に我らが戻す事が可能だ。緩慢な死を迎える為にあのような暗い箱庭に戻る必要は無い」

彼らの話しは解る所もあれば、解らない所もあった。
なのに――その手には、強力な魔力が、あった。
眼の前に並べられた二つの手。
それはとても力強く、郷愁を感じるものだった。


HP:153/153
MP:12/84
Eドラゴンキラー Eみかわしの服 Eパンツ
戦闘:物理障壁,攻勢力向上,治癒,上位治癒
通常:治癒,上位治癒
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