4の人◆gYINaOL2aEの物語
エレジー[2]
「さあ、泣け!泣いてルビーの涙を流すんだ!」
ゴッ、ガンッ、バチン。
「強情なヤツめ…これでもか!」
ドンッ、ギリギリ、ぐしゃり。
「おいおい…やり過ぎじゃねえのか?」
「あーあ…死んだら元も子もねーってのに」
「へへ、別に良いだろ。あれだけやっても一粒たりともルビーを流さねえんだから…よ!」
「まあな」
「人間様に楯突くこいつが悪いわな」
「ヒヒヒ、そういう事そういう事」
「……ロ……さ……ま……」
「ん?なんだ、まだ生きてるのか?」
「ピ……サロ……さま……きて……くださったのです……ね……」
現れたのは、魔王。その光景に、愕然とする。
限りなく完璧に強い力を持った存在が見せる狼狽。そして、絶望。
「貴様ら…ロザリーに…ロザリーに何をした…」
「あん?誰だおめえ、いつのまに…何って…なぁ?」
「へへ…」
彼らには解らない。
眼の前に、火山口がぽっかりと口を開き、中から今にもマグマが溢れ出さんとしている事が。
「ナニ、に決まってるじゃねーか…よ!」
がっと、ロザリーの頭が蹴り飛ばされる。
ぶつん。
そうして、何かが切れた。
「消えろォォォォォォォォォォォ!!!下衆ドモォォォォォォァァァァァァァァ!!!!!」
この世の、ありとあらゆる者を超える魔力。
それが、破壊の力へと姿を変える。
極大爆裂呪文(イオナズン)――呪文の中で、一つの頂点として評される周囲を破壊し尽す術。
辺りには何一つ、残っていなかった。
草も、樹も、動物も、虫も…人も。
魔王によってそこに存在するを許されたのは、唯、エルフの娘のみだった。
「ロザリー…ロザリー…?聴こえるか?」
「はい…聴こえます…やさしい…こ…え…」
「待っていろ、すぐに治療する…」
魔王の、先ほど破壊の術を行使した掌が優しく光る。周囲を打ち壊した魔力が、信じられないほどに暖かく光る。
完全治癒(ベホマ)の輝きが。
しかし。
その光は届かない。もう、遅過ぎたから。間に合わなかった、から。
「ピサロ…さま…わたしの…最後の…わが、まま、を…き…いて…くださ…い…」
「最後…?馬鹿なことを言うな…」
「どう、か…野望を…捨て…て…わた…しと…ふたりきり…で…ずっと――――――――……………………」
「ロ…ロザリー…!」
ふっと。
かろうじて、燃えていた命の灯火が、吹き消され。
―――――――――無音。
全ての音が死滅した、世界。
「………………」
絶望に満ちた世界で魔王は小さく呟いた。
最後の約束は――生まれ変わった先で果たそう、と。
それが最後の言葉。
エルフの娘が愛した魔族の男としての、最後の、言葉。
「許さん……許さんぞ……人間、いや……。
例えこの身がどうなろうとも、必ず……根絶やしにしてくれる……!」
魔王の視界が真紅に染まる。
彼の瞳から溢れる血涙の為に。
爆裂の余波でじりじりと燃え広がる紅の焔の為に。
何時の世も、人は、自らの手で滅びの運命を選ぶのだ。
何時の世も。何処の世も。
HP:105/105
MP:48/48
Eドラゴンキラー Eみかわしの服 Eパンツ
戦闘:物理障壁,攻勢力向上,治癒,上位治癒
通常:治癒,上位治癒
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