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暇潰し◆ODmtHj3GLQの物語

〜Jacob's Dreame〜[2-26]
キラキラ、キラキラ。
宝石のかけらがそれぞれに光を発しながら洞窟の地面へとゆっくり落ちていく。
その光は2人の愛を示すかのように、暖かみのある光だった。

「ぐ……がが……!」

もはや言葉にならない声を上げるクルエント。
その手がルビーのかけらを掴もうと天井に向かって持ち上げられるが、
震える手では何も捕らえる事は出来なかった。

そして一回だけ大きな咳をすると、その体は急速に力を失っていった。
伸ばされた腕がクルエントの本来の姿に戻りながら落ちていく。
いや、腕だけではない。
髪は白に、皮膚にはシワが、そして体格が小さくなっていく。
毛が抜け、歯が落ち、骨が枯れる。

「な…何これ……?」

人が歳を取る様を録画し、早送りで見るとこんな感じになるのだろうか。
三倍速でも足りない程のスピードでクルエントは老いた。
そしてあっという間に元の年齢を通り越し、命の果てにたどり着く。
その先にあるのは死。
かつて魔法界で名を馳せた男の末路は、他の誰とも変わらず衰えによるものだった。

「女王……女王……!」
「レギーナ、大丈夫か?」

パトリスとエルフ達が横たわる女王のもとに集まっていた。
気がついたようで女王の目が静かに一度だけ開けられたが、
パトリスとエルフ達の顔を確認するとまた閉じられる。

「負けたのですね」

不思議とすっきりした意識の中で、彼女は自らの敗北を理解する。

「しっかりしろ。あの人間は倒したぞ。今回復を」

パトリスに促され毒から回復したフィリアが女王の体に手をかざす。
しかし呪文を唱えても女王の傷は少しも癒える事がなかった。
フィリアは混乱した目でパトリスに助けを求めた。
しかしパトリスにはどうする事も出来ない。
女王がフィリアの手を掴み、感謝の意を示す。

「私は人間の事が嫌いです。
 でもあなただけは信じてもいいと思ったのです。
 なぜでしょうね……」

その言葉にフィリアは涙を流した。
もう別れが近いのだろう。

「レギーナ……里に帰るんじゃろ?」

懇願したいのを堪えるかのように、苦しそうに語りかけるパトリス。
しかし女王はそれには応じなかった。

「パトリス……エルフの血に特別な力などありません。
 エルフを誤解しないように――」
「分かった…分かったから……頼む……」
「……最期にお願いがあります」

彼女の手がパトリスの左手の指輪に触れる。
その動作だけでパトリスは彼女の望みを理解した。
他でもない彼女の頼みだ。
言う通りにせねばなるまい。
その指輪がいかに大切だとしても。
観念したパトリスは左手の薬指にある指輪を使い、女王のMPを回復した。

「ありがとう」

あのエルフと同じ言葉で、同じように笑う女王。

「メガザル」

孤独の女王、レギーナ。
その命と引き換えに娘を救ったその姿は、王として立派だった。

………
……

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