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◆fzAHzgUpjUの物語
[DQ4]

エンドール国領側、旅の扉
 回転の向きが変わった。途中までは確かに時計回りだったはずなのに、いつのまにか渦は反時計回りを繰り返している。まさか、こんな大変なときに元の世界に戻そうって言うの?
 ……冗談じゃない。
 アリーナちゃんの優勝商品としてもらったギターを、まだ彼女たちに聞かせてない。お世話になったサントハイムの人たちの安否を確認してもいない。
 やめて! 誰がこの渦を回してるのか知らないけど、邪魔しないで! サントハイムへ行かせて!
 回転が止まった。恐る恐る目を開けてみると、そこはエンドール側の旅の扉だった。もう一度渦に入りなおしてみても、時計回りの渦は内部に私を抱いたままで、反時計回りに切り替わってしまう。
 本当に移動すらしてないの?と思って、確認のために外へ出た。
「なに、これ……」
 ギターをもらったときと同じ台詞なのに、その意味合いはまったく違う。
 武術大会が開かれたついさっきまで、エンドール国領は春の盛りだった。淡い色の花がたくさん咲いていて、ちょうちょが飛んでいた。だけど、ここは……。
 ぎらつく陽光がサングラス越しにも眩しかった。木々の青々とした若葉は、夏空に向かって精一杯伸びている。遠くからも近くからもセミの鳴き声が耳を劈くように充満していた。じっとりと水気を含んだ暑い空気が、ぬるくてのろまな風に吹かれて革ジャンの中へもぐりこむ。
 どこをどう見ても夏だった。肌は暑いのを感じ取っているのに、不快感がまったくないのが怖かった。汗ひとつかいていない。そういえば、あのときはまったく気にしていなかったけれど、ライアンさんとイムルで出会ったのは、確か秋口だったはずなのに、アリーナちゃんたちとフレノールで出会ったときは、さっきみたいなうららかな春だった。
 時を越えて、魔力めいた渦に移動させられている―――。
 真夏の気温だというのに暑苦しいとも感じず革ジャンを着ているのもばかばかしかった。彼女たちを追えないなら、この世界で行く当てなんかどこにあるって言うんだろう。背中のギターの重みだって、ただ単に虚しいだけなのに。
 久々に覚えた苛立ちに唇を噛み締めながら、私は革ジャンを脱いだ。攻撃的な太陽光線は、サングラスの黒いレンズ越しに私の目を突き刺している。それが痛くて、涙が出た。


 第二章 完
 


Lv.12 メイ
HP:51/51 MP:53/53
E ホーリーランス
E 鉄の盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス・黄金の腕輪

戦闘呪文:ホイミ・スカラ・メラ・ヒャド
戦闘特技:なぎ払い・連続魔法(黄金の腕輪の効果)
所持金:171G

※ソリッドボディとかデタッチャブル〜は本編とは関係ないので気にしないで下さい。
 興奮のあまり小難しい単語を喋ってるだけですw
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