[NEXT] [] [INDEX] ▼DOWN

◆Tz30R5o5VIの物語

激闘!v.s.カンダタ戦!
長く広い、迷路の様なシャンパーニの塔を迷いながら進んでいった。トラップの仕掛けられた床、侵入者を阻むために配置されたモンスター達、先の階に進ませないためのトリック。
外を見たら分厚い雨雲が塔を覆っていた。
これだけ好調に冒険してきたのにバラモスへの道のりが、進めば進むだけ不安になるのは何故だろう。
全てのモンスターを従えるバラモス。おそろしいほどの魔力。世界を黒く覆い尽くすその存在。その存在があまりに静かで、不気味な気配があるのだ…。
オルテガがただ一人でバラモスを倒すために旅立った。
各地にその伝説は語られていた…。その強さを、勇気を。
しかしその後どうなったかは誰もたぶん知らない。
そう、ぼくはその偉大なるオルテガの息子―勇者として、アリアハンをでたのだ。
ピカ一の剣の実力をもつ戦士サイモン。ただ、いまだ本気で戦っていないようで実力は未知数である―。
オルテガを慕い幼い頃から武闘家の道を選び鍛練を続けてきたエリー。その男勝りの性格の奧にある淋しさややさしさをぼくは知っている。
神を信仰する僧侶ナナ。口数は少ないが、そのあたたかい空気、雰囲気がぼくらを癒してくれる。
―さあ行こう、この上にカンダタがいる、そして国宝を取り返すんだ―。

カンダタ「何だおめえらは…? 下の階に子分達がいたはずなんだがなんで此処にいる?」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「全員倒して来たんだよ、あとは君だけだ。―国宝『金の王冠』を返してもらう」
カンダタ「なるほど…おめえらは勇者御一行サマってわけだ」
少しの静寂。対峙している時間がとても長く感じられた。
女武闘家エリー「かんねんしなさいよ」
カンダタ「はっはっは!王冠ならこの塔の屋根に飾ってある。俺を倒せたら持っていっていいぞ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…なんでロマリアの国宝を盗んだんだ」
男戦士サイモン「そうだな。どんな理由があったんだ?」
カンダタ「いずれ、世界のお宝の全てを手に入れるからだ」
盗賊らしい答えだった。ぼくらがバラモスを倒さなければいけないように、彼もまた確固たる自分の信念があるようだ。
戦いは避けられない―。
『カンダタがあらわれた。』
ついにバトルだ―。
『カンダタが先制攻撃をとった!』
なっ!?
カンダタ「おおおおッッ!!!!」
おそろしい巨体がふるう豪腕――。
『カンダタ、会心の一撃!』
ナナを襲ったその一撃を、サイモンがかばう―。
女僧侶ナナ「…さっ!サイモン!…」
サイモンはナナをおおうように前に立ち、カンダタの攻撃を背で受けた―。
男戦士サイモン「うぐ……。ナ…ナ……」サイモンは膝をつきガクリと倒れた。「……ゆきひろ…こんなところでお前は死ぬなよ………」
…そして目を閉じた…。
サイモンのHPが0…………。
―――サイモンが…、死んだ……。

サイモンが死んだ…。
カンダタ「ま、まだやるか?」
敵も少し状況に困惑していた。
女武闘家エリー「あの体力馬鹿がこんなに簡単に……う…あああぁ!!!」
ぼくは攻撃にはいろうとしたエリーを止めた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「やめろ! うかつに飛び込むな、まだサイモンは大丈夫だ、ぼく達だけでカンダタを倒すしかない…。三人で連携してもちこたえて戦うんだ!」
そうは言ったものの長期戦になり、サイモンの死に動揺した今のぼくらに勝ち目はうすかった。
いつのまにか、雨が降りだしていた。
まるでサイモンへ捧ぐレクイエムのようにシトシトと降りそそぎ、そのうち稀にみる大雨――嵐へと変わった。
こんな非力なぼくが勇者なのか? 許されることじゃない。ぼくらはまだ負けるわけにはいかない…。バラモスを倒すために生まれた運命の血…。この血が敗北を許さないだろう。
どくん…。
血が逆流したかのように身体中が熱くなった。
女武闘家エリー「あっ!」
攻撃を防御されたエリーの鉄の爪が折れてしまった。
ナナのMPもきれてしまっていた。
もうぼくしかいないんだ。
バラモスへの道のりをとじるわけにはいかない。
ぼくはカンダタに向かっておたけびをあげて、剣をかまえ走りだした。

例えばコンマ数秒のことが鈍く数十秒にも一分にも感じられるという死の直前におこるといわれる走馬燈のように、悲しいほどぼくの一撃はゆっくりとかわされ、カンダタにそのまま身体ごと吹き飛ばされた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ぼくは………」
女武闘家エリー「ゆきひろ!!!」
女僧侶ナナ「大丈夫ですかっ!?…」
二人が駆け寄ってきた…。こんなに頼りないぼくが勇者なんて。
カンダタ「…このまま帰れば生命まではとらないぞ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「か…帰れるわけがない、ぼくは勇者なんだ…だから…。必ずおまえを」
カンダタ「おめえは弱い。弱いヤツとは戦いたくない。出なおしてくるんだな……」
その時雷鳴が鳴り響いた―。
ぼくは弱い…。確かに非力だ。
ナナのような魔力もなければ、サイモンのような腕力も、エリーのような俊敏さもない。
ぼくにあるものはなんだ?
また雷鳴が鳴った。
雷が屋根を吹き飛ばし空が見えた。
この雷のように強くなれたなら―。
速くてそしてなによりも強い力―。
かみなり―雷。
雷だ…。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…カンダタ、勝負だ」

ぼくは剣を天空にむけた。
それがどんなにおそろしいことか分かっていた。
女武闘家エリー「あんた! 何をやる気なの?!」
カンダタ「読めたぞ…。そんなことをしたら死ぬのがわからないのか」
どくん…。
血が逆流する。不死鳥ラーミア。精霊ルビス。ぼくに力を。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「勇者の名において命令する―。雷よ我に力を与えよ―。―雷よ!!!」
雷鳴が鳴った―。
剣を伝いぼくは雷に貫かれた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「………ら、ライデインだ。―これがライデイン…。カンダタをも貫け!」
カンダタに向かってぼくはまた駆け出した。これが最後の力―。
ぼくはカンダタに剣を突き刺したまま、カンダタを逃がさないようにするために自らをもまきこむように呪文を唱えた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ライデイン!!!!!」
稲妻はカンダタとぼくを直撃した。
『カンダタを倒した。』
これでよかったんだ…。
ぼくの残りのHPは1。紙一重だった。
そしてぼくも倒れた……。
女武闘家エリー「ゆきひろ!」
倒れて意識を失うまでによくエリーの声が聞こえた。
エリー、ごめん…。
[NEXT] [] [INDEX] ▲TOP

©2008-AQUA SYSTEM-