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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

恐怖の船出[2]
途中道端で寝ていたパンツと合流し本日二回目の城へ着いた。
バカ王はピエロの格好から王の格好に着替えた。入り口で兵士が敬礼する。
今回はお早いお帰りですねだと?今回はって…お早いって…いやもう突っ込むのはやめよう。

王の間へ着いた。大臣は部屋で寝込んでるらしい。ストレスの溜まり過ぎだろう。
王が王だけにさすがの俺ですら同情を禁じ得ない。まあいいや。バカ王に船が欲しい旨を話す。
暫く考え込む。
船一隻ともなるとバカでもさすがにホイホイとあげられないのか。
王が口を開く。
この国には船は何隻かあるものの、船乗りは必要最低人数しかいない。
つまり船はやってもいいが船乗りはつける事はできないという事だ。
船があっても動かせなければどうしようもない。これは困った。

パンツ:あっし船操舵できるでやんすよ。

………。俺の聞き間違えだろうか。

パンツ:あっし盗賊になる前は海賊だったでやんす。

………。あり得ない。こいつに操舵ができるはずがない。超絶天然バカのこいつに!
脳ミソまで筋肉化したこいつに!

勇者がすごーいカンダタちゃんすごい♪これで出航できるね!とか言って煽りやがる。
全会一致でパンツを船長にする流れだ。やべえ。これはやべえ。パンツも乗り気だ。
おいやめろバカおまえら考え直せ!こいつが地図逆さに見てて遭難しかけたのもう忘れたのか!?
パンツが船長の船なんてある意味魔王と戦う事なんかより遥かに危険だ!
魔王に殺られるならまだしも遭難難破で海の藻屑になるなんて死んでも死にきれねーぞ!
え?何?今から船に案内するだと?バカ!だから待てって!
おいコラ人の話を聞け!殴んぞ!

俺の必死の抵抗も虚しくパンツが船長になった。終わりだ。俺達の旅は終わった。完全に。
しぶしぶついて行き船の前に着いた。なかなかいい船だ。この船が俺達の棺桶となるのか…

パンツはさすがに一人で操舵はできないらしく子分がいると言ってきた。
子分?ああそういやこいつらのアジトの塔に置いてきたな。
そこでパンツは羽を使って子分を呼びに行くことになった。
一人だと迷子になる可能性大なのでねーちゃんも保護者としてついて行かせた。
ほんとは最初は勇者がついて行くと言ったのだがこいつが行くと余計に事態が悪化するからやめさせた。
勇者はふてくされてずっと頬を膨らませている。ガキか。

道具屋に行く。
パンツとねーちゃんは羽を買うなりさっさと行ってしまった。俺はご機嫌ナナメな勇者様の子守だ。
二人が帰って来るまで町をぶらつく事にした。突然勇者が振り返る。なんだよ。

名前つけなきゃ…これからいっぱい働いてもらうんだし。うん名前がいる!

どうやらあの船に名前をつけたいらしい。
名前とかはどうでもいいがこれで機嫌が直るならそれでいいや。
で、どんな名前がいいんだと聞いてみる。

え?ラブラブネコちゃん号?…それは嫌だ。え?キラキラチューリップちゃん号?

…それも嫌だ。確信した。コイツにはセンスが無い。てか「ちゃん」から離れろ。

じゃあ総長ちゃんもなんか案出してよって言われた。
名前か…そういや俺の族時代の愛車はフレアラインのZU…

漢の単車ゼッツー

思わず口にでた。

何それ全然かわいくない。意味わかんないし。総長ちゃんセンスないね。

…おまえに言われたくねえ…

その後白熱した討論の末名前は「みんなのゼッツーちゃん号」に決定した。
正直もう何でもいい。ゼッツーちゃん号…いい名前じゃん…ははは…

その後うだうだ喋りながらウロウロしてると向こうから柄の悪い集団が来る。パンツ達だ。
しかし見れば見るほど一緒に旅をしたくない連中だ。
兄貴と旅ができて嬉しいっすとか言ってやがる。俺は何一つ嬉しくねーぞ。とにかく船着場に向かった。

船着場に着くなりパンツ共は出航の準備を始めた。
妙に手際がいい。さすが元海賊といった所か。
俺は危うく感心しかけたがやめた。こいつに期待してもいつも裏切られる。もう騙されないぞ。
暇そうにボーっと船を眺める三人。そこにバカ王達がやってきた。なにやら馬車をひいている。
馬車には食料と水が大量に積んであった。餞別に持ってけという。気がきくじゃねーかよ。

ようやく出航の準備が終わる。
さて問題は次の目的地だ。復習だが俺達はシェンロン復活のためオーブを集めている。
バカ王曰くここから遥か南のランシールという町がある島に「地球のへそ」と言われる地下洞があり、そこに元々オーブがあったらしい。そして勇者の親父が再びそこに封印したらしい。
よしそれなら行き先は決まった。次の目的地はランシールだ。早速船に乗り込む俺達。
下手したらもうこの足で大地を踏みつけるのも最後になるかもしれない。覚悟を決める。

ちょっと総長ちゃん!何してんの早くおいでよ!おいてっちゃうよ!  

…はいはい。

船の上から勇者達は楽しそうにバカ王に手を振っている。
帆を張り碇を上げると船はゆっくりと動き出した。
バカ王がどんどん小さくなる。ついには見えなくなった。帆船てのもけっこうスピード出るもんだ。
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