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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

王冠を奪い返せ
―次の日―

目覚めるともう太陽は高かった。寝坊した。頭痛い。腹減った。
俺はふらふらしながらかろうじてポケットに残ってた5ゴールドでパンを買いかじりながら町を出た。

今日もいい天気だ。しばらく歩くと青寒天が出る。相変わらずかわいい。
よくみると隣に色違いの赤寒天までいやがる。
こいつらは噛み付かれるのにだけ注意すればウエイトが軽いため体当たりはまったく効かない。
殺すのも可哀想なんで無視する事にした。後ろから必死に追いかけてくる姿またかわいい。
俺がこの世界を制した暁には寒天を飼おうと思う。楽しみだ。

寒天が諦め追いかけてこなくなると今度は犬が現れた。よく見ると所々が腐っている。気持ち悪りい。
俺は買ったばかりのてつのおので真っ二つにした。何がショックかっていきなり新品の斧がドロドロに汚れた。
新相棒の最初の獲物が腐った犬とは…俺はテンションが下がりつつも塔を目指した。

道中ゾンビ犬だの寒天だのでかいきのこだのが現れるがてつのおのの威力により苦戦する事は無かった。
そしてついに塔が見えてきた。

塔に入る。見張りなどはいない。ひとまず道なりに昇って行く。ややこしい。設計したやつ殴りてえ。

しばらく昇ると妙な三人組みがいた。向こうは俺の顔を見るなり顔色が変わる。
あ!こいつらこないだボコったやつらじゃん。そうかカンダタの手下だったのか。
三人で何か話し合っている。そして逃げた。俺も追って階段を昇る。

そこにはカンダタと思われるパンツに覆面&マントというとんでもない格好のやつがいた。
しかし手下が手下なら親分も親分だ。なんてファッションセンスだ。俺の戦闘意欲はマックスで失せた。

めんどくせーからとっとと終わらそう。
よくも子分をだの俺の名前は大盗賊カンダタだの言ってる間に近づいて一発脳天にてつのおのを見舞う。
ガキンッと金属音が響く。
こいつ覆面の下になんか仕込んでやがるな。カンダタは激怒した。

おまえには騎士道精神ってものがないのか外道!と言われる。盗賊が何言ってんだ…
そして子分にこいつは俺一人で片付けるから手を出すなと言った。アホだ。正真正銘のアホだ。

そこから俺とカンダタのタイマンが始まった。
お互い腕が上がらなくなるまで斧を振り回し、顔がボコボコになるまで殴りあった。

最後に立ってたのは俺だった。

カンダタは観念したのか煮るなりやくなり好きにしろと言う。俺は「きんのかんむり」を取り返した。
もうここには用はない。足早に塔を出た。入り口付近に差し掛かった所でカンダタらしき悲鳴が聞こえる。
無視してよかったのだが何となく見に行ってみた。カンダタがデカ蛙数匹に囲まれている。
手下は気絶している。…弱い…なんて弱い盗賊団なんだ…泣ける…さすがに同情を禁じえない。

適当に蛙を追っ払うとカンダタが涙目で抱きついてきた。
痛いって!そんな力入れるなっつの!俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味はねーんだよ!離れろ!

カンダタは世界で一番蛙が苦手らしい。俺は命の恩人と崇められてしまった。なんだこの展開は。
だがしかし次にもっと驚く展開になる。カンダタが俺を子分にしろと聞かない。子分も同じく騒ぐ。
嫌だと言って塔を出たが後ろからゾロゾロついてくる。マジ勘弁してくれ…

そこで俺はこいつらを舎弟にする事にした。新鬼浜爆走愚連隊栄光の船出だ…栄光の…ぐぅ…
栄えある初代のメンバーがこいつらか…

子分は塔の警備役(というか足手まといなんでいらない)として置いていく事にする。
一応俺らは盗賊じゃなく族なんだと言う事を言い聞かせたがこいつらはバカだから理解してないだろう。
まあいい。とりあえず親分じゃなく総長と呼ばすのだけは徹底させよう。

来た道を戻る。もう日が沈みかけている。途中魔物も出たがカンダタが一人で暴れて片付けた。
なかなか使える野郎だ。頭は悪いが腕力だけはある。特攻隊長くらいにしてやってもいいかも知れない。
そうして城に戻った時にはすっかり夜も更けていた。


門番はカンダタを見て腰を抜かしていた。無視して進み王様の前に立つ。
王様にきんのかんむりを渡した。衛兵がカンダタを連行しようとするので止める。
王冠も戻ったしこいつを無罪にしてくれないかと頼んだ。大臣憤怒。
まわりがざわつき始める。もしこいつを引き渡すのを拒否すると俺も連行されるかもしれない。
しかし舎弟のために体を張るのは総長として当然の事だろう。俺はいざとなればこの国と戦争する決意をした。
そして王の重い口が開く。

いいよ。

一瞬時が止まった。

大臣が物凄い勢いで王様をまくし立てる。このバカ王なんてイカしたヤツだろう。最高だ。
じいさんはゲラゲラ笑ってる。次の一言がまたイカレた内容だった。

さあ!王冠を取り返した英雄をもてなす宴の準備をせい!

数時間後。

王冠を盗んだカンダタ、盗まれた王様、取り返した俺という異色中の異色の組み合わせで宴会が始まった。

カンダタは物凄いペースで酒を飲む。こいつ自分がしでかした事をわかってるのだろうか?
王様も王様でヘラヘラしながらこれまた凄いペースで飲み続ける。
大臣は呆れて物も言えないといった感じだ。

まあそんな事よりも俺はこの国の肉料理に感動した。甘辛く重厚でそれでいてしつこくない。
三人の豪快な食いっぷり、飲みっぷりに即発され兵士達も騒ぎ出し、明け方には全員床で寝ていた。

ひたすら飲まずに食っていた俺はこの光景を見て思った。
ああこの国は純粋にバカなんだと。そら王冠も盗まれるわ。
と、ここでじいさんが話しかけてきた。いきなり身の上話を始める。興味ねえどっかいけよジジイ。

だが話の内容は驚くべき内容だった。このじいさんと王様は昔一緒に冒険した仲らしい。
しかもその冒険というのも魔王討伐だというのだ。その時は多大な犠牲と共に魔王を封印できたらしい。
信じがたい話だが俺は妙に納得した。
あの王様の目はカタギの目じゃない。絶対に人を殺めた事のある目だ。
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