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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

総長じいさんと出会う[1]
一応ジジイにも世話なったし挨拶しとくか。頼むから無茶はするなたまには帰ってこいだと?
これだから辛気臭い年寄は嫌いだ。なにが悲しくてこんなじいさんの顔見に帰らなきゃいけないんだ。
まああのビールとバニーの姉ちゃん見にたまには戻ってやってもいいがなウヘヘ。
ついでに生きてるかどうか確認しに帰ってやるか。いつポックリ逝くかわかったもんじゃねえ。
ジジイは名残惜しそうにまた例の羽を使って帰って行った。 

さて、次の目的地だがどうやらここから南に大きな町があるようだ。
どうせなんのあても無い事だし、とりあえず人の多いとこの方が色々情報が集まるかもしれない。
俺は南を目指す事にした。
ちなみにここでの収穫は「たびびとのふく」と「やくそう」をいくつか買った。
道具屋のおっさんが旅にでるなら絶対持ってけと勧めたからだ。
あっそれと城での飯は超絶最高にうまかった。あの肉の味は忘れまい。


町を出た。

しばらく歩くと頭に防災頭巾の顔色の悪いガキが道端に立っているのを発見する。

!?

そいつは俺を見るや否や弓をかまえ矢を放った。間一髪でかわす俺。
なんてガキだ。親のしつけはどうなってるのだろうか。
知らない人に矢を放っちゃいけませんとは教えられなかったのだろうか。

そんな事を考えてるうちに第二射が飛んで来る。
太ももに刺さった。痛い。しかしこの距離だと反撃できん。じわじわ弄り殺しになるだけだ。
さてどうしたものか。よく見ると連射は出来ないらしくリロード中に隙ができている。

ここだ!俺は勢いよくガキに向かって走りだした。矢が飛んで来る。盾で強引に叩き落す。
そして次の矢を弓に掛ける瞬間俺の中段回し蹴りが直撃した。
中段といっても身長差でちょうどガキの顔面にヒットする。
間髪入れずに左の順突き、右の逆突きが入る。

俺がもっとも得意とするコンビネーションだ。ガキはその場にうずくまる。勝った。
俺は親父の影響でジャリの頃から空手を仕込まれてきた。まさかこんなとこで役に立つとは。
こいつはおそらく町で聞いた魔王の手下の“魔族”と呼ばれる人種だろう。

こんなガキの頃から躊躇無く人に向かって矢が撃てるなんてなかなか感心できる。
昔連れにひとし君というのがいたが、そいつは親が極道で小学生のうちから妙に刃物の扱いがうまかった。
もしかして魔族はそれが一般的なのだろうか。
なんてデンジャラスな人種だ。

立ち上がった色の悪いガキは命乞いしてきた。無論俺は許した。子供を手にかける趣味はない。
法の道は外れようとも人の道は外れないのが族の粋ってもんだろ。イカスな俺。

そさくさと去っていくガキを尻目に俺は刺さった矢を抜いた。困った。
この傷で目的地まで歩けるだろうか。しばらく進むか引き返すか考え込む。
ん、そういや道具やでなんか買ったっけな。たしかこの辺に…あったあった。
俺はやくそうを取り出した。使い方がわからないので傷口にこすり付けてみる。
するとどうだろう。みるみるうちに痛みが引き傷口が塞がっていく。これは便利だ。
次の町ではやくそうを大量に買おうと心に決め俺は歩き出した。が、疲れた。
照りつける太陽がむかつく。やかましいセミの声がむかつく。
あまりにもむかつくので大きな岩の影で小休止する事にした。
なかなか涼しくていい感じだ。いつのまにかうとうとし始める…


グゥウォオオォォッゥ!!!

とてつもない唸り声に飛び起きた。岩の脇から覗くと変なじいさんが2mは優に超す熊に襲われている。
状況は絶望的だ。貧相なじいさんに勝ち目は無い。俺は思った。ご愁傷様だな。
心の中で静かに念仏を唱えてやった。
じいさんも観念したのか目を瞑ってブツブツ言っている。そして叫んだ。

メラミ!!!

え?メラミ?最後の言葉にしちゃヘンチクリンだがまあ気が動転してたんだろう。
誰だって死を目の前にして冷静でいる事の方が難しい。
俺は熊に気づかれる前にこの場を去ろうと逃げる準備をした。

その瞬間あり得ない光景を目にする。

じいさんの手からデカイ火の玉が発射され熊を直撃した。一瞬で熊は黒焦げになった。

情けない事に俺は完全に腰を抜かしてしまった。じいさんが立ち去ろうとする。
このまま帰すわけにはいかない。
おい!と声を上げる。裏返ってしまった。最悪だ。
とりあえずじいさんに駆け寄る。今の炎は何なんだと尋ねる。じいさんはキョトンとしている。

は?おぬし魔法を見たこと無いのかだと?あるわけねーだろバカ。おまえら変態集団と一緒にすんな。
どうやらこのじいさんは職業魔法使いらしい。
魔法使いといっても俺には引田天功かウザイ眼鏡の外国のガキか、柔術マジシャン・ノゲイラしか頭に浮かばない。
しかしこんなじいさんでも熊を倒せるなんて何て強力な力だろう。
じいさんに俺にも魔法を教えてくれと頼んだ。断られた。
かわいい年寄りの大ピンチを傍観しとるようなやつには教えてやらんとニヤニヤしながら言いやがった。

こいつ気づいてやがった…
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