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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

総長[1]
…………………。
…………。
……。

ん………んン?

痛い。頭がめちゃくちゃに痛い。意識は戻ったのだが目は開きたくない。
もうこのまま死ぬまで眠っていたい気分だ。

…………みっ……みず……。

そう、これは俗に言う二日酔いというやつだ。まあ一年中毎日ゲロゲロになるまで飲んでるから今更なのだが、今日はいつもに増して気持ち悪い。とりあえず水を……おおッ!?

ベッドから起き上がって俺は数秒間フリーズした。これは………どこだ!?
見慣れた小汚いせまっ苦しいボロアパートの一室ではない。確実にない。

きれいなシーツに洋風の家具、窓から覗く空は心なしか普段より澄んで見える。
俺は痛い頭を必死に回転させてある結論を導いた。

……よし!逃げよう!

部屋から出て階段を下る。一目散に出口と思われる扉を目指す。
幸運な事にここの家主はいないみたいだ。おそらく俺は酔っ払ってどこか知らない家に上がりこんで
眠ってしまったに違いない。確実に不法侵入だ。サツはもう懲り懲りだ。

バタンッ!

…………おおおおッうッ!!!!

なんだこののどかな田舎町は!?一瞬強烈な違和感を覚えたがその理由はすぐにわかった。
電柱がない。アスファルトがない。車なんてもっての他だ。
さすがに泥酔して無意識に行動したにしてもこんな僻地まで来るもんだろうか。
俺のアル中も比較的末期のようだ。とりあえず家に帰らなくては。

ここがどこかまったく見当もつかないが探せば駅くらいはあるはずだ。
そこから電車で帰ろう。俺はとりあえず村の出口らしき所から外に出た。
その辺の人に道を聞いてもよかったのだが田舎町ってのは人の出入りがない分よそ者が目立つ。
俺があの変な家から出てくる所を目撃していた人がいるかも知れない。
ここは一刻も早く離れるべきだと俺の直感が伝えていた。

しかし出たはいいものも見渡す限り謎の大自然である。下手したら今日中には帰れないかも知れない。
トボトボ歩き出した目の前に何かが飛び出した。

青い寒天のような物体。寒天に目と口がついている。これは………かわいい……
こんな生き物は見たことがない。もしかしてツチノコとかそういう類か?それなら捕まえたら金になるかもしれない。つーかかわいい。飼いたい。

頭を撫でようと近づいた。よしよし…………ガブリッ!!いてッ!!!

いきなり噛み付く青寒天。なんて凶暴な生き物だ!俺はすかさず蹴りで反撃した。
青寒天はプゲッと潰れてしまった。田舎の野生生物はなんて危険なのだろう。

また草むらの影から何かが飛び出した。今度はもぐらだ。しかも生意気にもスコップまで持ってやがる。
やたら目つきが悪い。てめえこのヤロー俺にメンチきるなんて上等じゃねえかこのヤロー!
持っていたスコップを取り上げて思い切りブン殴ってやった。

ちくしょうなんてデンジャラスな所なんだ。いつの間にか日も落ちかけている。
もうここは素直に諦めてさっきの村へ戻ろう。事情を話せばサツに突き出される事もないだろう。多分。

そうして俺はまた村の入り口に戻ってきた。

しかしなんだここの人間は。みんなコスプレみたいな格好してやがる。どう考えても現代の日本とは思えない。
不気味な村だ。こうなってくるとあのボロアパートですら恋しくなるぜ。

とりあえず今日は木陰で寝て明日誰かに道を聞いて帰る事にしよう。
野宿なんて不本意だがこんな気持ち悪い連中の世話にはなりたくない。なんだかすげー疲れた。

木陰でウトウトしていると酔っ払ったおっさんが絡んできた。うぜえ。とりあえずブン殴ったら気絶した。
倒れる際に何枚かの硬貨を落とした。これは……見た所外国のお金のようだ。
迷惑料として貰っておくか。

しかしあんな酔っ払いがからんでくるような所じゃ熟睡できない。仕方なく別の場所を探しにまた歩き出した。

と、しょぼくれたジジイが話しかけてきた。なんだよさっきから酔っ払いとかジジイとかよ!
俺は一人が好きなんだよ!ほっといてくれよ!

無視して歩きだすと後ろをついてくる。ああああああうぜえええええええええ
立ち止まるとまた話しかけてきた。

ジジイ「うーむ…見慣れぬその服装…先程の旅のお方かね?」

すかさず胸倉を掴む俺

俺「あーそうだよだったらなんだアぁ?中学から愛用の学校指定ジャージに文句でもあんのかアぁ?」

ジジイ「くっ苦しい…!やっ宿がお決まりでないのなら…我が教会に…ゴフッ!」

宿だと?手を離した。

ジジイ「はぁ…はぁ…その身なりじゃ持ち合わせもないじゃろうて…」

なるほどなるほどつまりこんな時間にみすぼらしい格好でウロウロしてる旅人なんてどうせ金なくてホテルなんぞ泊まれないだろうからうちに泊まりに来いって事か。ふざけんな!
確かにボロジャージだがてめえらみてえなコスプレよりはまだ人として正しいぞボケ!
再度捕まりかかろうとする

ジジイ「こすぷれ?なんじゃそれは?とにかくここは寒かろうてうちの来なさい。」

手を止めて考える。確かに野宿は辛い。ここはいっちょこのジジイの世話になるかな。
警察に突き出すって訳でも無さそうだしな。

俺はジジイの後について行く事にした。着いたのは何て事無い今朝いたわりと大きな建物だった。
聞くと所によるとここは教会らしい。ジジイは神父だとさ。
神父…日本ではあまり聞かない。こちとら仏教だ。奈良の大仏なめんな。
まてまてという事はここはもしかして外国!?明らかに違う風貌の村、人、空気。可能性は十分に有り得る。

急過ぎる展開にまた頭痛が。とりあえず寝よう。これは悪い夢だ。そうに違いない。
目が覚めるとまたいつ死んでもいいようなくだらない毎日が始まるんだきっとそうだ。

部屋に案内されるとジジイを無視して俺はベッドに転がりこんだ。そしてすぐに死んだように寝てしまった。
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