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◆Y0.K8lGEMAの物語
[第四話]

晴闘雨読[2]
俺達をぐるりと取り囲むモンスター。

青いタマネギみたいなプルプル…あぁ〜コイツどっかで見たことあるなぁ…
でかいハンマーを担いだ小人みたいなヤツ…アレで殴られたのか…
そして、灰色のイタチみたいなヤツ…でも妙に首が長くてキモイ…

「二人とも落ち着いて。背後を取られないように円陣を組むんだ! ヘンリーは魔法で右のスライム達を頼む。数が多いから気を付けて! 僕が前方のガスミンクを引き受ける。イサミは後方のブラウニーだ」

サトチーが的確に指示を出し、ガスミンクにチェーンクロスを振るう。
ムチ男との戦闘のときにも思ったが、やはり場慣れしている。

「よぉし、かかって来やがれスライムども!」
ヘンリーがスライム達にメラを放つ。

よし!俺も……  ―!!―


ドゴッ!


不意打ち…いや、戦闘中によそ見をしていた俺が悪いか…
ブラウニーのハンマーは辛うじて俺の頭部を掠めるにとどまったが、アレを頭に喰らったら大怪我じゃ済まないな。

サトチーから譲り受けた銅の剣を構え、一回深呼吸…

行くぞ!!

俺の脳天目掛けて振り下ろされるハンマーをサイドステップでかわす。
そんな大振り、不意打ちじゃなきゃ誰が喰らうかってんだ。

空振ったハンマーを足で押さえつけ、剣でブラウニーの胴体を薙ぎ払う。

―!?!?!?!!―

ブラウニーの小さな体は宙を舞い、草むらに頭から突っ込んで動かなくなった。
切れ味の悪い銅の剣だから殺しちゃいないと思うんだけど…後味悪いなあ…

「お疲れさま。二人とも怪我はないかい?」
「はん。俺様がスライム如きに遅れをとるかっての」
ガスミンクとスライムの群れを撃退した二人の表情は余裕が感じ取れる。
…これがコッチの普通なんだよな…

「イサミは大丈夫かい?」
「…え?…うん、俺も平気。何とか一撃も喰らわないで勝てたよ」
「そう…なら良いんだけど、難しい顔をしてたからさ」
参ったな。俺が表情に出やすいのか、サトチーが鋭いのか…
「ああ…ホラ、俺の世界じゃあモンスターなんていなかったからさ、どうにも戦闘に慣れていないって言うかさ…」
「…他の生き物の命を奪う事に慣れていない…って?」
本当…鋭いな、サトチーは…

「……ていっ!」 びしっ!
「痛!」
久しぶりにヘンリーのチョップが俺の脳天に叩き込まれる。

…正直、今のは結構痛いツボだったんですけど…

「まぁたイサミはグジグジ言いやがって。お前の目的は何だ? 言ってみろ!! お前がどんだけ甘い事言ってたって、モンスターにはそんな事お構いなしだ。むしろ、相手は無防備・無抵抗な人間を喜んで殺しに来るんだぞ? 平和な世界を引き摺ったままの考えじゃあ、目的達成の前にモンスターの晩飯だ。それが嫌ならさっさと気持ちを切り替えろ!!」
いつも見せるおちゃらけた表情とは違う真面目な顔でヘンリーが俺に語りかける。

…そうだ、平和ボケした考えじゃあこの先を生き残れない。
負けない。強くなる。そう誓ったばかりじゃないか。

「イサミ。ヘンリーの言う通り、これがコッチの世界で生きるための最低条件なんだ。すぐには気持ちを切り替えられないかもしれないけど、でなければ生き残れない。それに、僕やヘンリーだって相手の命を奪う事に慣れてなんかいないよ。いや、人間なら誰だってそうじゃないのかい?」

俺は二人を見つめ、黙って頷いた。
…生き残る…そのためには、降りかかる火の粉は払わなければ…

「まあ…いきなりコッチの世界の常識に合わせるのはは難しいよなあ。もし俺がソッチに行って、『家の外に一歩も出ない生活がコッチの常識だ』 …なあんて言われたら退屈で退屈で死んじまうよ」
「そうだよねえ。モンスターが出ない世界なんて羨ましいと思ったけど、そう考えるとイサミの世界で生きるのも大変なんだろうね」

…やっぱり誤解されてるよ…

「だから、俺の世界ってのはそうじゃなくってさあ…」

―この二人に俺の世界の正しい姿を伝える―
…俺の旅にもう一つの目標が加わったが、自動車も電気もガスもコンクリートも…
そもそも科学の概念が通じない二人に説明するのは奴隷の救出よりも難しいのかも…

…ん?足元に何か…

ああ、ブラウニーの持ってたハンマーか。
どうしよう?

拾いますか?

→はい
 いいえ

イサミは おおきづち を手に入れた。


イサミ  LV 5
職業:異邦人
HP:35/41
MP:7/7
装備:E銅の剣 Eブルゾン

持ち物:カバン おおきづち

呪文・特技:岩石落とし(未完成)
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