[] [] [INDEX] ▼DOWN

タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

予感
グランバニアへ向け出発し何日も過ぎた
この地方の地図はないが、真新しい休憩小屋がわかりやすく道沿いにあったため順調だ
魔物の気配すら感じることがなく
"もしかすると平和になったんじゃないか?"
そう思ってしまう程に、道は人々が行き交い、途中、新しい町の建設もされていた

「なんだか、平和に見えるね」
「ああ、ほんとにな
 魔物が出なくなったんだ、そう思ってしまうのも無理は無い」
「無理は無いって、何か思い当たることでもあるの?」
「アトラス、やつが現われたじゃないか」
「あ、そうね まだ魔物はいなくなっていないのね…」
「うん だから」
「…油断はしないで、進んでいきましょう」

昼と夜の繰り返し
魔物は姿を見せず、代わりにたくさんの商人を見掛ける
俺達は少し疲れ、平地へ腰を降ろし休んでいた
時間は夕刻
遠い地平線に真っ赤な陽が、その身を隠そうとゆっくり動いている

「なぁ、この世界は丸いのk─ ?!」

メイが突然、俺の背に自分の背中をくっつけ座り直した
急な事にとんでもなく動揺してしまう

「少し、こうして座っててもいい?
 背中をつける場所がないから、こうすればお互いもう少しゆっくりできるから」

俺は慣れないシチュエーションに内心かなり焦っていたが
"いいよ"
と、普段と変わらない調子で返事をした

「ありがとう
 …なんだか、嫌な予感がしてたまらないの
 どう伝えればいいのか、まるで今の瞬間が、最後の瞬間なような気がして…」

あまり、自分が考え悩むことを俺に話すことがなかったメイ
そのメイがそう言っている

「そうか… だけど予感は外れることだってあるじゃないか
 あまり、考えすぎる事はない」
「うん…」
「もうすぐグランバニアだって、さっき話した商人も言ってた
 ライフコッド直行じゃなくて、一度グランバニアで休んでいこうか?」
「ううん、大丈夫 きっと… 私の思い過ごしよ
 だけどもう少し、このまま…」

最後の瞬間とはどういった意味だろう
どうしても負の方向へしか考えられないから、陽で染まる地を眺め、気持ちをからっぽにしようと俺は努めた


次の日、朝から雨が降っていた
雨はとても冷たく、気持ちもどんよりと曇る
俺たち二人は雨のせいか全く人通りの無くなった道を進む
もう数時間も歩けばグランバニアだ

「タカハシ、私これ以上進みたくない」

メイはそう言うと、立ち止まってしまう
表情がよくない

「どうしたんだ? もうすぐグランバニアに着くじゃないか」
「ごめん だけど、進むと何か、よくない事が起こりそうで…」
「そうは言っても… 昨日言ってた"予感"か?」
「昨日よりも、とても大きな─」

二人の周りを薄暗い霧が、どこからか囲み始める

「なんだ?!! 突然、いったいどこから!」

俺は焦りオリハルコンの剣を手に、メイの前へ

「なにが─!」

後ろから、バシと何かが叩かれる音と、すぐ後ろで人が地に倒される音も聞こえ
同時に、今までに感じたことがないほど大きく邪悪で寒気のする気配

剣と一緒に振り向くと、空間に突如現われたガラスのような扉から
マントに身を包んだ若く、スラリとした男
メイが俺のすぐ後ろに倒れ、ゴホとむせていた

「誰だ! メイに何をした?!」

メイを俺の後ろへ立たせ、グッとオリハルコンの剣を両手で構えながら男に怒鳴りつけた
ガラスの扉がスゥと消える

「ルビスの遣いを殺しにきた」

マントを翻し、静かに語りだす男
その身体は漆黒の鎧に包まれ、武器などは一切所持していない

「何を言って…!!」

恐ろしい
この男は、その存在を確かめただけで、とても強い力を持っているとわかる
俺はオリハルコンへ、全ての魔力を注ぎこみ急襲に備えた

「貴様等人間は、多すぎる 大勢は必要なくなったのだ
 遣いを殺した後─ 私自らこの世を洗浄しよう…」

なんだこの男…!
まるで自分が支配者のような事を……
う、まさかこいつが─!!

「我が名はゾーマ この世界、そして宇宙を支配するのは神ではなくこの私…」
[] [] [INDEX] ▲TOP

©2006-AQUA SYSTEM-