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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

旅立ち
気を失った俺は完全に回復するまで宿屋のベッドで過ごし、重傷だったテリーも
隣のベッドで寝ていたが驚異の回復力で俺より早くベッドを降りた
とても死に掛けていたとは思えない


トルネコは─
身体は完全に回復した
だけど、あのドラゴンが言った通り全ての記憶を失い戦う力も無くなっている
この事は魔王の手下によって全ての人間達に知らされたそうだ

突然、人間の敵である魔王から伝えられた勇者の敗北
人々は勇者がいた事すら知らなかったのに、勇者が現れた喜びより先に悲しみを聞かされ
魔王の思惑通り、人々はこの世界の未来に絶望した


ライフコッドにはグランバニアからたくさんの兵士を引き連れ王がやってきた
王は俺とテリーに詳細を求め、トルネコと会った後

「まるで人形では無いか……」

そう呟きしばらく塞ぎ込んだ


回復し目を覚ましたトルネコはまるで別人だった
感情を無くし表情は薄れ、話しかけてもあまり反応が無い
当然、ネネも大きなショックを受けしばらく泣き続けていたが

「私がきっと治してみせます
 トルネコさんが何者であろうと、私の気持ちは揺るぎません
 それにやっと… この村に留まってくださったのだから……」

そう言って顔を直し、トルネコと暮らし始めた
だが俺は ひどく感思し村の外で思いうらぶれた



あの戦いから十日がすぎ、村は平静を取り戻し元のゆっくりした時間が流れている
トルネコの件があったというのにそれさえやさしく包んでくれる、不思議な雰囲気だ

「タカハシ、お前はこれからどうするつもりだ?」
「一度グランバニアヘ行こうと思ってる
 この村には預り所が無いからトルネコさんの荷物を預けられないんだ
 その後フィッシュベルの鍛冶屋へ行くよ」

テリーと二人、入口広場で話し込む

"フィッシュベルの鍛冶屋カンダタに鍛え直してもらうように"
この伝言と共に俺はトルネコの荷物 そしてオリハルコンの剣をネネから託されていた

「そうか… 雷鳴の剣、折ってしまって悪かった
 あれから忙しくて言う暇無くてすまない」
「気にすることはないよ、俺にはオリハルコンの剣がある
 それで、雷鳴の剣も修理してテリーが使ってくれないか?」

雷鳴の剣の持ち主としてふさわしいのは電撃を操るテリーだろう

「いいのか!? …しかし折れた剣を修理出来るのか、それにこれは魔法剣だ」
「大丈夫だと思う、フィッシュベルの鍛冶屋は魔法剣を鍛え直せるって前にトルネコさんが言ってた」
「む… フィッシュベルにそんな名工がいたとは…
 決めた、俺は城を辞め雷鳴の剣を直し修行の旅に出る
 上級兵士だなんて調子に乗って安心しきっていた自分を鍛え直す」

テリーが悔顔で言う

あの戦いはトルネコや俺だけでなく テリーの先行きまで変えてしまった

「この村の警備はどうするんだ?」
「王が警備兵を置いていってくれたから大丈夫だろう」

王はグランバニアへ戻る際、連れてきた兵の一部を警戒の為村へ残していた

「一緒にフィッシュベルまで旅しようじゃないか、タカハシ!」
「うん、俺も心強い よろしく」
「かなり長い旅になるからグランバニアでしっかり準備していこう」

テリーは今すぐ出発しようと言いたげだったが、俺はいろいろ準備があるから出発を明日にしようと提案した

「ふーん? グランバニアでもいいような気もするが、まぁ構わないよ」



本当は準備する事なんてこの村では何もない
旅に出ればきっと厳しい毎日だろう
だから、この平和な情景を忘れないよう焼き付けておこうと思った
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