[] [INDEX] ▼DOWN

タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

目覚め
●目覚め

バキッ ドスン!

「いたたた…」

まだ眠い目をこすりながら起き上がる
どうやらベッドの足が壊れてしまったようだ

「あーあ…」

壊れたベッドにガッカリしながら時計を探す、が…

「ここは… 俺の部屋じゃない…?」

八帖くらいの部屋に壊れたベッドと覚えの無いタンス
しかもタンスは引出しが飛び出し荒らされた痕まである

「どこだここ?! 昨日は確かに自分の部屋で眠ったはず!?」

自分の部屋では無いことに気付き、慌てて携帯や財布を探すが見当たらない
服装もTシャツにジャージではなく、薄い布の上下と底の厚いブーツ姿になっている
窓の外は明るいから夜は明けているのだろう

「…」

床は所々抜け落ち、物が無造作に放り投げられている
とりあえず部屋を出ることにし半開きのドアを開けた

部屋を出ると長い廊下が続きその先には広いホール、そのホールの突き当たりに大きな扉がある
ホールへ向かいミシミシという音にびびりながら廊下を歩く

ホールにはカウンターがありテーブルと椅子が散乱していた
ますます恐ろしい、足早に通り過ぎる
大きな扉には”装備は万全ですか?いってらっしゃい! 宿屋ラリホー二号店”と書いてある

「宿屋? 装備? 意味分からないな…」

大きな扉を開け外に出る

「え─ ?!」

目の前には四角い建物が並び舗装された歩道がある
建物があるにしてはしかし、全く人の気配を感じられず耳鳴りするほど静かだ
見覚えも全くない

「俺は…どうかしてしまったのか? 夢か?」

顔に自分で平手打ちしてみるが目が冴えるだけで、布団の中では無い事を認識するだけだった

冴え渡った目でさっきより広い範囲を見渡す
壁が崩れている建物がいくつかありキレイに見えた歩道もひび割れている
地面は人の足で踏み均した土だ

「廃墟…?」

荒された宿屋の部屋といい人気が全くない事を考えるとここは捨てられた町…
そうとしか思えない

「なんでこんな事に?」

全く思い当たるフシがなくただ唖然とする

「昨日… コンビニで立ち読みした本の表紙を破いてそのまま戻した…
 まさかバチが当たったのか? だからこんな事に?!」

混乱しすぎておかしな妄想に浸っていると突然─
不穏な、明らかに人ではない気配を感じ変な汗が身体中に噴き出しはじめる

「な、なぜかものすごくヤバイ気がする…」

焦り、逃げようと思ったがどこへ逃げればいいか判らない
とにかく、ここから離れる事に決め後ろを振り返らないようにしながら歩道を走り出す
歩道の先にアーチ状の門を見付け、駆け抜ける

「ハァハァ…! なんだ ハァハァ… なにが フゥハァ…」

不穏な気配はなくなり、後ろを振り返ると砂利や短い草が広がる地に町が見える
今いる場所もその周りの景色も全てベージュとグリーンに覆われていた

「フゥ… まるで富士山のふもとだな…」

外から見る町は低い石の壁に囲まれた狭い箱庭みたいな造りだ
まるで剣と魔法の世界を描き3部作がヒットしたあの洋画の世界

「これからどうしたらいいんだろう
 こんなへんぴな場所で携帯も財布も何もない…」

陽の感じから見て夏の正午過ぎくらいだろう
寒くもなく暑くもない過ごしやすい気候だ

「ここにいても仕方がない、歩いて民家を探すか… はぁ」


晴れた空を見上げプカプカと流れていく雲を追いかけることにした
[] [INDEX] ▲TOP

©2006-AQUA SYSTEM-