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最終章[10]
「ありがとうドラオ」
「やったな!」
「ん。アレンは?」
「外に出ていった。恥ずかしいんだろう」
「お手柄だったぞ〜タロウ!」
「わんわんっ!」
「おい、見てみろよ」
「あ……」

指差す方を見上げると、月夜の光が天井に開いた穴から差し込み台座を暗闇の中に浮かび上がらせる。
夕暮れに見た光景とはまた違った神秘的な雰囲気を作り出していた。
穴を見上げると戦闘の勝利を祝福しているかのような綺麗な満月が望める。
絶妙な光加減に見とれていると、その中から何かが舞い降りてきた。
「……人?」
「あ、あなたは……?」
「ふぁぁ……よく寝たわい……わしは神様だよー」
「は……?」
一同は思わず目を丸くしてしまう。
今この人は何と言ったのだろうか。
「大きな音がしたから起きて来てみれば……ふぅむ、こりゃ他の世界の神に本格的に怒られるかもしれんなぁ。ま、そういうシナリオもありじゃと思うがの」
いきなり現れては何か意味深な事を言うこの方が神様だとは到底思えなかった。

「わんわんっ!!」
しかしタロウがすぐに自称神様へと飛びつく。
それでこの自称神様が少なくとも悪い奴ではないと分かる。
「神様……あなたはこの状況を分かっておいでで?」
神様の名にたじろぐ事のないセブンが問う。
タロウの頭をナデナデしながら神様はつまらなさそうに答えた。

「……今この作り合わされし世界は元に戻ろうという動きをし始めておる。その動きは結果として互いを排除する行為に等しくなっとるがな。その力が臨界点を超えると、全ての世界が崩壊してしまうかもしれんのじゃ! ふん、これで良いか? ワシを誰じゃと思っとる」
「くぅん……」
「おーよしよし。あのサクヤとかいう奴は石版を壊したからこうなったと思ってるみたいじゃが、異変は魔王を封印した時から始まとるんじゃ」
「どういう事ですか?」
確かにサクヤは多くの嘘をついていたが、この世界に関する事だけは間違っていなかった。
その事は今の自称神様の話で分かる。

「世界を作る時のルールがある。そのルールをワシは破ってしまった。どうにも我慢できなくての……」
「世界の、ルール?」
「魔王は勇者によって倒されなければならない。それが絶対条件」
「じゃあ何で破ったんだよ」
「名前じゃよ、名前」
「名前……?」

「ポックンブリードという名前が気に入らなかったんじゃ。魔王なのに全然強そうじゃないじゃん? それで新しい魔王を生み出そうと思ったんじゃが、勇者が現れるのを待ちきれんかった。つまり悪いのはぜーんぶワシって事!」
ハハハと陽気に笑う神様。
対して一同は呆れるばかりだった。
「ならどうすればいいのです? もしあなたが本当に神様なら、全てをきちんと元通りに出来るのでは?」
「……疑いに勝る偽り事はない。故に信じる者は救われると言うじゃろ」
「……?」
「石版を」

急に真剣な顔になった神様が腕を伸ばし、その手に乗せるように促す。
石版を調べるようにしばらく眺めた後、その唇が静かに言葉を紡ぐ。


引き裂かれし大地――
世界の裏側へと落ちた星々――
闇の中へと消える心の光――
全ては在るべき姿へと――
全ては輝ける力へと――
全ては帰る場所へと――


残っていた割れ目が光り、石版は完全に元の姿を取り戻した。
「さぁこの石版をその台座にはめるんじゃ。それで間違いなくお前達は元の世界へと帰れる」
再度、台座へと石版をはめこむ。

しなのはタロウを片手に抱え上げ、ヨウイチの腕を取った。
そして互いを見やって、微笑み合う。
光がみんなを包み込んでいく。

「これで世は全て事もなし、じゃ。重なっていた幾つもの世界―― 複雑に作り合わされし世界――」
その言葉にようやく安堵の表情を浮かべる勇者達。
神様はその表情を順に見回して優しく微笑んだ。
「――そして石版に封印されし魔王も」
「え?! 魔王も?!」
みんなの体が少しずつ世界から消えていく。
「世界に秩序を取り戻す為にはそれしか方法がない。そしてお前達を安全に帰す為にも、な」
幾つもの不安そうな顔を前に神様は笑った。
「じゃが心配するでない。ワシには見える。再び世界を覆いつくすであろう闇に勝る大きな大きな光が。そしてその様が語り尽くされぬ物語となって語り続けられる事が。お前達はその物語の一部となった。だから、礼を言うぞ」
神様の言葉を全て聞き終わる前に彼らはそれぞれの場所へと帰りついた。





そしてこの世界に魔王が復活した。










FF・ドラクエ板

もし目が覚めたら
そこがDQ世界の宿屋だったら』

10スレ記念合同作品
〜作り合わされし世界〜




     〜END〜
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