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◆2yD2HI9qc.の物語

三十一、旅の続き
「じゃあ、女将さん。たくさん、返せなかったけどいっぱい、ありがとう」
「いいんだよ。私もあんたと出会えてうれしかったし。きっと、目的を果たせるといいね。良い意味で、もう会うことがない事を祈ってるよ。……まぁ、どうしようもなくなったらいつ戻ってきてもいいんだよ!」

その言葉にうなずいて宿屋を離れ、なるべく振り返らずクレージュの町を後にします。
少し外れた大地の上で大きな空を見上げて深呼吸し、それからまた歩き始めました。



それから二週間ほど後の晩、海の見える森の中にドラオの墓を立て言いました。

「いろいろあったよなぁ」

ネックレスをその墓へおき、旅やドラオやシエーナの女の人、そしてゲレゲレを思い出しくすりと笑います。

「しっかし、女将さんもよくこんな剣を手に入れられたな」

体のすぐ側に銅の剣よりもっと強力な破邪の剣を携えます。
女将さんが神殿の噂と一緒に入手しておいてくれたものでした。

「…ドラオ、本当ならお前と一緒にこの場所にいたかもしれない。俺はお前が本当に俺と旅をしてよかったのかってまだ迷ってる。もし、女将さんと一緒だったら死なずにすんだのに… ほんとに俺を守れてうれしかったのか?」

クレージュを出てからどの町へ立ち寄ってもキレイな場所を見つけても、素直に喜べませんでした。
それは、今までならドラオと分け合ってきた喜びや感動が半分になってしまったからです。
もし、ちゃんとした別れが出来たなら半分にはならなかった、ヨウイチはそう考えていました。

「お前の行動に報いるには、俺はぜったいに帰らなきゃならない。 …叶うならお前に会って一言だけでも交わしたい」

空は答えを与えず願いは叶いません。
流れ星がいくつか線を引いた後、やがてまどろみ始めます。

陽が昇ればまた旅は続きます。
目が覚めればいつものようにドラオを探してしまうでしょう。
それでも、歩かなければならないのです。
よく聞くことがあります。

『時間が全てを癒してくれる』

それは確かなことでしょう。
これからの路は全てが悲しいものではありません。
苦しくも楽しく、辛くとも幸せな事の繰り返しです。
そうやって悲しい記憶はたくさんの思い出の一つになって、ほんの少しだけ薄れるのです。
忘れるのではありません。

ヨウイチもそれは知っていました。
ですが、時間は過ごさなければ流れません。
その時間を過ごす間をどうすればいいのか、まだわかりませんでした。

考えているうちに眠りへと落ちます。
その困難な時間を過ごす明日を迎えるためにそして、元の世界へと帰るため。


――最終章へ――
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