[完結一覧] ▼DOWN


13泊目 324
私は夢も希望もない人間です。
何の才能もないため毎日遅くまで仕事をしなければなりません。
つまらない仕事を繰り返すだけのつまらない毎日です。
でも生きていくためには働かねばなりません。
どこかに何もしないで暮らせるところはないものなのでしょうか。

目が覚めると私はトルネコと呼ばれる男になっていました。
トルネコにはきれいな奥さんと可愛い子供がいます。
彼は商売人として武器屋というところで雇われています。
仕事は単調ですがそれまでの私からすれば考えられないような恵まれた職場環境です。
でも贅沢を言えば結婚前の恋愛というものも経験してみたかったものです。

次に目が覚めると元の世界に戻っていました。
あれは一時の夢だったのでしょうか。
私はいつものように部屋の中で何もしない日々が待っています。
いえ今日は久しぶりに古い友人と会う約束がありました。
現実世界でも夢のように何かいい出会いがあればよいのですが。

友人と会いましたが特に何もないまま終わり家に戻り就寝しました。
目が覚めるとまたトルネコになっていました。
そこで仕事を捨てて放浪の旅に出ることになりました。
労働者として経営者からから搾取されるだけの生活に耐えられなかったのです。
旅先で妙な村に迷い込みました。そこでは一人の男が彼女ができたと喜んでいます。


目が覚めるとまた元の世界です。
どうやら眠るたびにあちらの世界とこちらの世界を行き来するみたいです。
ところでこの前会った友人から女の子を紹介してもらえるということになりました。
私にもようやく春がめぐってきたようです。
それともまだ夢を見ているのでしょうか。

狐を追い払い男が正気に戻ったことでエンドールへ向かう橋が修復されました。
ボンモールの王子様の手紙をエンドールのお姫様に届けることになりました。
私の活躍で二つの国は戦争を回避することができました。
この二人は結婚することになりそうです。
どうやら春を迎えるのは私だけではないようです。

紹介されたのは思っていたよりもずっと可愛い女の子でした。
夢の中で勇気を出して冒険を始めたようにちょっと勇気を出して告白しました。
なんとこの女の子とお付き合いすることになりました。
これから現実でも楽しい日々が始まることでしょう。
もう夢を見ることはないかもしれません。

夢は見ました。夢の中で店を持つことができました。これで私も経営者です。
国王にコネクションがあるため仕事も発注してもらえました。
そのうち店を大きくして従業員を雇えるようになりたいものです。
けれども経営者と言うのは労働者の敵です。私も敵が増えて行きそうです。
気をつけることにしましょう。敵はどこに潜んでいるか分かりません。


些細なことで彼女と喧嘩してしまいました。彼女は恐ろしい言葉を口にします。
何ともおぞましいことです。夢の世界で言うところの魔王のようなものです。
奴らは平和に生活する善良な市民の生活を脅かす敵なのです。滅ぶべきなのです。
彼女は邪な存在です。性根が腐っていると言っていいでしょう。
腐ったものを放置すると害にしかなりません。どうにかしなければいけません。

仕事は順調で王さまからの依頼品を納めかなりのお金を手に入れることができました。
このお金でトンネルを掘り新たな商売の可能性を広げることにしました。
そうそう久しぶりにレイクナバへ戻った時に破邪の剣というものを手に入れました。
この武器があれば文字通り邪なものを破ることができるのです。
私はどんな邪悪なものでもうち払える力を手に入れたのです。

彼女はもう二度と邪な考えを抱くことはないでしょう。
私はそばに横たわる彼女の顔を覗き込みます。
なぜか前に見たときよりも可愛いものではないように思えました。
でも恐ろしい言葉は言いません。
今度は腐らないようにちゃんと防腐処理をしておきましょう。

私の店は順調です。奥さんが商才を発揮してくれています。
それなのに私は天空の剣を探す旅に出ることになりました。
強力な敵と戦うために力を持った人とコネクションを作る必要もあります。
でもこれは私の意志ではないような気がします。まるで何かに導かれるようです。
私は危険を冒さず簡単な仕事をして細々とした生活を送りたかった。

魔王を倒せば平和を愛する人々から賞賛されます。
でもこの世界ではそうはいかないようです。
相手が人間ならば罰せられ刑務所に入れられてしまいます。
私はそこで単調な作業を繰り返しています。
この私と馬車の中にいるだけの私、はたしてどっちが夢だったのでしょうか。
[完結一覧] ▲TOP