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◆I15DZS9nBcの物語
[すりりんぐぶれいぶはーと]

間幕
どうやら僕はとてつもない田舎に紛れ込んだのではなく、不思議なところに来てしまったようだ。
「言語は日本語なのに日本という国が存在しないなんて、はて、ここはどこなのだろうか」
あまり考えたくないけれどここはどうやら異世界なのかもしれない。
紙幣は珍しがられるけどそれだけで使い物にならないし、小銭も金じゃないから役に立たないから困った。
この世界では物々交換か金による取引しか成立しないらしい。
「困ったなー困ったなー、そろそろ家に帰りたいなー」
言葉に出してみるとあまり困った風には見えないけど僕は心底困っていた。
生活面ではいわゆる紐生活を送っているためそこまで困らないけど、さすがにずっとこうしているわけにもいかない。
だけど、他にすることが見つからない。
どうやら男のする仕事は肉体労働ばっかりで僕には向いてない。
兵士なんて冗談、自慢じゃないけど僕は運動が苦手。
かと言ってそんなに頭が良いわけじゃない、みんなが褒めてくれるのは声と顔ぐらい。
「でも、それのおかげ今も平穏な生活がおくれてるわけで、僕も捨てたものじゃないかも」
今僕を飼ってくれてる人はお金持ちの奥さまで僕を芸術品の一部として飾ってる節がある。
だから僕の美しさを損ねないように良いものを食べさせてくれるけど僕にはどうも口に合わない。
もちろん出されたものをマズそう食べるほど僕は愚行ではないから美味しくいただくけど半ば演技としかいえない。
奥さまも一日中僕にべったりしてるわけじゃないからある程度暇な時間はあるけど琴の練習に忙しい。
とりあえず飼ってくれてる間はいいけど、あの手の女性は飽きたらほっぽり出すから怖い。
そのためには詩を謳い、音色を奏でなければならないのだ。
僕がこの世界で生きていくには吟遊詩人に成りきるしかない。
手先はわりと器用なほうだと思うけど、二つの作業を同時にこなすのは一苦労。
正直もう投げ出したい気分でいっぱいだけど生きていくにはしょうがない。
「はあ、退屈だなぁ、テレビ見たいなぁ」
携帯の電波ももちろん入らないから救助も求められないし、何で目が覚めたら異国の宿屋なんだろう。
もう、知らない。
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